FC2ブログ

竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

あの子はいつも、おねむちゃん(ストライクウィッチーズSS)

 早朝。突然の衝撃に目覚めた宮藤芳佳は、ベッドの上で自らの足元に視線を向けると、慌てて飛び起きた。
「さっ、サーニャちゃん!?」
 透き通るような銀髪に、北国の生まれを示すように一切の日焼けが認められない純白の肌。現実離れした透明な空気を纏う彼女は、まるで妖精みたいだった。
 小柄な身体はまだまだお子様と自覚する芳佳と比べても、個別の部位に至るまで全てにおいて未成熟。だとというのに、この子は綺麗過ぎて肌を見せられるとドキドキする。女の子同士でいけない、おかしい、そう思っても止まらなかった。
「んぅ……すぅ……すぅ……」
 そんな彼女が、服を脱ぎ散らかしてそのまま倒れ込み、他人のベッドで安らかな寝息を立てている。どこか上品なところのあるお嬢さんなので、芳佳にとっては意外すぎる行動だった。
「サーニャ、ちゃん……?」
 ベッドの上で、這い進む様に恐る恐る近づき、声をかけながら頬を突付いてみる。柔らかい。そして、いくら突付いても目覚める気配は無かった。
 その特殊能力を買われ、夜間哨戒は殆どが彼女の仕事である。もちろん他の者が受け持つ日もあるが、その場合は最低限二名と決められていた。その危険で気の抜けない任務を、夜を徹して一人でやり遂げたのだ。しかも特別な事ではなく、彼女にとっては日常である。
 ただでさえスーパーエースが揃う部隊だ。その中にあっては、異常なほど広範囲の索敵能力を持つサーニャといえど、決して目立つ存在ではない。しかし、まだ大した働きも出来ない芳佳にとっては、それでも他の先輩達と同じく雲の上の存在だった。
「起こしたら、可哀相、だよね……」
 寝床を提供するだけで、何かの足しになるのなら。そう思う事にした。
 しかし、一緒に寝る訳にはいかない。女の子同士だから問題は無いのだが、相手がこの北国少女だと何故かムラムラしてしまうので、どうせ寝付けないだろう。
 起きて、着替えて、少し早いけど朝食の用意をしよう。今日は当番ではないが、どうせルッキーニとシャーリーではろくなものは出ない。喜びこそすれ、怒る隊員は居ないだろう。本人だって、きっと抱きついてきて頬をスリスリして、喜んでくれる。
「……はっ!?」
 気付くと涎が垂れていた。何に対して? ――分からない。考えない事にしよう。
 そうと決まれば善は急げ。ベッドから這い出し、芳佳は立ち上がると元気良く伸びをした。
 だが、後ろのほうが妙に引っ張られる感覚。
「……すぅ……すぅ……」
 背後を振り返れば、安らかな寝息、安らかな寝顔。綺麗な綺麗な、サーニャ・V・リトヴャクのあられもない寝姿。
 その彼女の小さな手は、何かに縋るように芳佳の寝間着の裾をガッチリ掴んで離さないのだった。



「宮藤っ!」
 サーニャの手を、怪我などさせないように丁寧に開こうと悪戦苦闘している、まさにその時だった。芳佳の部屋の扉を勢いよく開いて現れたのは、サーニャの相方ことエイラ・イルマタル・ユーティライネンである。
 こちらもサーニャと同じく、白い肌と銀色の髪が印象的な北欧のエースだ。狂気染みた回避能力を誇る天才、このストライク・ウィッチーズにおいてなお際立つ技量を誇る、北欧最強の魔女。
 その彼女がこの世の終わりみたいな顔をして怒鳴り込んできた。いつも温厚で、ペリーヌをからかっている時ですらどこか余裕のある態度の彼女だから、そんな様子に芳佳は目を白黒させた。
「ど、どうしたんですかエイラさん」
「そんな落ち着いてる場合じゃないんだっ!」
「何も分からないんじゃ焦る事も出来ませんっ!」
 芳佳が負けないくらい大きな声で言い返すと、そうか、と納得して何度か深呼吸をするエイラ。そして、表情を引き締めてからゆっくりと口を開く。
「サーニャが、戻らないんだ」
「……え?」
「いつもなら私の部屋に来てこう、ベッドに倒れこんできて、そのままグッスリなのに、……なのに……え~と……」
 激しい身振り手振りを付けて説明したものだから、芳佳が邪魔で見えなかったものが見えたらしい。エイラは芳佳の背後を呆然と見つめている。
「えーと、これは、ですね」
 浮気が発覚したみたいな、何とも言えない居心地の悪さ。何も悪い事はしていないはずなのに、何か言い訳をと芳佳は頭をフル回転させる。
「なんだ、部屋を間違えたのか」
 しかし、エイラの勝手な納得の方が早かった。
「……ちがう」
 なるほど、と芳佳も納得しかけたのだが、その時背後から異議を唱える声が発せられた。
「サーニャ、起きたのか。寝ぼけて、宮藤に迷惑をかけちゃ駄目だゾ。ほら、部屋に帰ろう」
 エイラには聞こえなかったのか、はたまた聞かなかった事にしたのか。どちらかはともかく、サーニャはもう一度、ハッキリと首を振った。
「エイラ、今日だけって」
 眠そうに目を擦りながら、ベッドの上に横たわるサーニャは小さく呟く。今度こそはエイラにも聞こえた様で、ショックで元々白い顔が更に青白くなった。
「……迷惑、だから」
「そ、それは宮藤でも誰でも一緒じゃないかっ!」
「まだ拒否されてないもの」
「うっ、ううぅっ。そもそも自分の部屋に戻るのが基本だぞっ!」
「夜は空で一人だから。帰ってきたら、お話も出来ないけど、一人で寝るのは寂しいの」
「そ、それなら何で私のところに――」
「迷惑」
 眠そうな目だが、それが怒っているように見えたのか、エイラは数歩後退るとその場に膝を付きながら頭を下げた。
「ごめん、サーニャ。頼むから戻ってきて。私の所で、毎日、好きなだけ寝ていいから」
 サーニャは今にも夢の世界へ旅立とうとしていたが、最後の力を振り絞ってこくんと頷いた。そして、
「ありがとう」
 芳佳に微笑みながら、そうお礼を言って再び眠りに落ちる。
「え、ええと。ど、どうなったんでしょうか。というか大丈夫ですか、エイラさん」
「大丈夫だ。迷惑かけたナ、宮藤」
「はぁ……」
 突然、普段通りの平静な表情に戻ったかと思うと、エイラはスタスタとベッドに近づいていって、サーニャの小柄な身体を肩に抱え上げた。
「じゃあな」
「はぁ……」
 溜め息みたいな返事を繰り返すしかない芳佳を置き去りにして、エイラは来た時とは正反対の、軍人らしく規則正しい足音を残して去っていった。



 後日、悩みに悩んでミーナ隊長にだけ相談してみた芳佳は、
「あら。貴方も経験したのね。いわゆる通過儀礼、かしら」
 包容力のある笑みと共に、そんな答えを頂いた。
「宮藤さんも、コレで立派なウィッチーズの一員ね」
 彼女が言うには、ルッキーニと並んで隊のマスコット的な立場でありながら、やや人見知りするサーニャに気に入られる事は大きな意味を持つらしい。
「私、これで一人前なんでしょうか」
「そんな事は無いわ。気持ちとして受け入れられただけであって、技術はしっかり身に着けましょうね」
 最後に釘を刺す辺り、さすがはミーナ隊長である。
 年の功だと感心する芳佳だったが、その直後に軽く睨まれて、そっちの方が強く記憶に焼き付くのだった。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





目次へ戻る


テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/10/08(水) 01:14:13|
  2. Canvas以外の二次創作

メニュー

無料レンタルサーバー

まったり空間
↑↓気軽に押してね♪

FC2Blog Ranking

プロフィール

 管理者:マク
 ご意見・ご要望・ご感想・リンク希望等は拍手か以下のメールフォームにお願いします。

 また、投稿作品を掲載して欲しいという場合にも、こちらのメールフォームにて受け付けます。投稿作品の感想は、各作品のコメント欄を開放しているので、そちらで受け付けます。

名前:
メール:
件名:
本文:

 拍手で長文を送りたい場合はこちらでも可。
 設定で無しに出来ないためこうなっていますが、メールアドレスが描きたくない場合は以下のアドレスを入力して送ってください。
 仮入力アドレス:teki@tou.de

カテゴリー

FC2投票

攻略するとSSが生まれるかも知れない。

無料アクセス解析

二次創作サイト更新情報



リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSリンクの表示