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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

告白  ~第三話~

 美術部の活動も休みで、暇な時間が出来てしまった、そんなある日の午後である。
 押し付けられた予定表によると丁度良く麻巳が店に出ているらしく、顔でも覗こうと『やどりぎ』に向かうことした。ついでにプレゼントでも買おうと、当ても無く馴染みの商店街を冷やかしてみる。
 ――先日、とある事情でプレゼントなどしてみたところ、大層喜ばれたので調子に乗って再現してみようという、まあ気紛れの思いつきだ。その前回というのが洒落で済む値段でもなかったため、今回は『贈る』という事実のみに注目してもらうことになるが、それでも精一杯選んだという名目だけは立てねばならない。
 しかし、いざ商店街に到着すると、俺はもう誤魔化す算段を始めていた。貴金属なら話は早いが、そう値が張らずに女性が喜ぶもの、となると見当も付かない。スケッチする時にでも役立つだろうし、匂い付きの消しゴムでも買おうかね――などと、駄目すぎる事を半ば本気で考えていた時だった。
「もしも~し」
 背後から肩を突付かれ、何事かと振り向く。
「お散歩ですか、ご主人様?」
 笑顔で、腹式呼吸が完璧なやたら通る声で言ってきたのは、バイトの制服に身を包んだ麻巳だった。親父さんに買出しを頼まれでもしたのだろう。
 先日の、初めて貴金属をプレゼントした日から異様なくらいご機嫌な麻巳さんである。偶然に俺を見つけて更に気を良くしたのなら、こちらにとっても喜ばしいことだが、しかしだ。
 メイドそのものの格好で、そんなことを公衆の面前で言われてはたまらない。案の定、道行くおばちゃんが何事かと足を止めて振り返る。放課後の時間帯の為、学生なども少なくなく、俺は否応なしに好奇の視線に晒された。
「お前な。分かっててやってるだろ」
「なんのことですか?」
 無邪気に笑って答える麻巳だったが、これは営業スマイルの一つだと俺は理解している。軽いセクハラを右から左へ受け流す、無敵の『意味分かりません』モードだ。この顔になると何を言っても聞こえやしない。俺は諦めて溜息をついた。
 まあ、この格好の麻巳と連れ立って町を歩くのは初めてではない。俺が『やどりぎ』に居る時は、いつも買出しについて行くのだ。さすがにもう慣れている。悪ふざけな発言の一つや二つ、今更なんてことはな――
「……うわぁ。あれが噂の?」
「みたいね。メイド連れて歩く勘違い男」
 ――大したことはない。断じて無い。
「奥様聞きまして?」
「ええ。変態ですってよ。いやねぇ……」
 ああもうすみませんごめんなさい勘弁してください。お願いだから、そんな変質者見るような目だけはやめてくれ。
 しかし、こういう時のひそひそ話がやたらハッキリ聞こえるのは何故なんだろう。
「ともかく行くぞ。買い物は終わったんだろ」
 一刻も早くこの場を離れたい俺は、麻巳の抱える大荷物を半分奪いながら言った。
 本来なら全部持ってやりたいところだが、そうすると不毛な押し問答が始まるのだ。どうせ半分までしか承諾しないコイツを早々に納得させるには、有無を言わさず半分、コレが正解なのである。
「お店に来てくださるところだったんですか?」
「ああ。顔でも覗いてやろうと思ってな」
「うふふ。嬉しい……」
 さっさと急ぎ足で歩き始めた俺を追いかけるように小走りで付いてくる麻巳も、態度にこそ出さないものの、先ほどの声が聞こえていなかった訳ではないだろう。そんなものより、俺の反応を『照れている』とでも思って楽しむ事に全力投球なのだ。
 まあ合わせて動いてくれるならなんでもいい。いつもなら歩幅を抑えてやるところだが、これはもう完全に麻巳のせいだ。俺は気にせず早歩きのまま『やどりぎ』までの道を急いだ。
 店までずっと早足で、にもかかわらず文句を言うどころか漏れ出る笑みを抑えきれず、かなり危ない人になっている麻巳のことは、とりあえず気にしないことにする。
 道中、俺が気にしていたのはプレゼントを買い損ねたことくらいだった。



 二人揃って店に入り、俺が適当に席についている間に麻巳は店の奥に買って来たものを置いてくる。
 彼女はすぐに店内へ戻ってきたが、その頃にはちょうどよく新しい客がやって来ていた。個人的な立場もあって常連の中でも特に入り浸っている俺なのだが、それでも見覚えの無い連中だった。
「いらっしゃいませ~」
 営業スマイルで迎える麻巳を見て、二人連れの男性客は驚いている。しかし、見たところその表情はやや意外なニュアンスを含んでいた。麻巳の奇抜な格好に驚くでもなく、容姿に見惚れるでもなく、その口から出た言葉に残念がっているような――。
(なるほどな)
 要するに、先ほどの路上でのやり取りを見て付いてきた奴が居たというわけだ。麻巳が『宣伝になる』と以前に言っていたメイド服のままでの買出しだが、あながち出鱈目でもないらしい。
 客を案内した後、俺のところに注文を取りに来た麻巳に、他に聞こえないよう声を絞って尋ねてみる。
「宣伝も結構だが、そんな危ない客ばっかりになったら、それでもいいのか?」
「大丈夫ですよ。どうせコーヒーを美味しいと思ってくれるお客さんしか残りませんので。それに、一番危ないお客さんは目の前に居ますし」
 心配されたことが嬉しいとでも感じたのか、業務用の枠を越えて素の笑顔を滲ませながら麻巳は言った。
 ――俺は顔がにやけそうになるのを必死に堪え、誤魔化すようにぶっきらぼうな声でアメリカンコーヒーを頼む。こちらの内心を見透かしてか、注文を請け負った麻巳はスキップでもしそうなほど軽やかな足取りで厨房へ戻った。
 コーヒーならカウンターの親父さんへ伝えるはずで、何のつもりだ――と俺が訝るその時である。メイド服で現れた竹内ママが、先ほどの二人連れの男性客のテーブルへと向かったのだ。手際よくオススメのメニューを紹介し、軽食まで注文させるオマケ付きだ。
 確か、年甲斐も無く似合いすぎて逆に危ないからと、お袋さんのメイド服は麻巳が禁止していたはずだが。
 不意打ちに呆けていたところをやられた客は、やっと我に帰って軽食だけはキャンセルしようとお袋さんに声をかけるが、その時に振り返った彼女の笑顔こそは見ものだった。
「――はい?」
 小首を傾げながら、笑顔で問い返したその顔は、一瞬だけ二十年くらい若返って見える――というか、まんま麻巳の『右から左』スマイルと瓜二つなのだった。



 例の二人連れの客は結局、再び麻巳の姿を見ることは無かった。それでも帰り際は満足そうな顔をしていたのだから、親父さんのコーヒーといいお袋さんの軽食といい、相変わらず大したものだ。
 いや、それだけでもないか。あの二人連れの客は、お袋さんの笑顔で十分に満足していた様にも見えた。ご主人様の一言も与えないどころかこれでは、もはや詐欺だろうと俺も麻巳の腹黒さには呆れていたのだが、人によってはそうでも無いらしい。
 何にしろ、あの連中はまた来店しそうだ。それもコーヒーとお袋さん目当てで。殆ど執事服を着ているなどとは、もちろん知らないままに。
 ――俺が二杯目のコーヒーを半分ほど飲んだ頃、再びメイド服姿の麻巳が店内に戻ってきて、俺の座る席までやってきた。
 麻巳が喋り出す前に、俺は先んじて糾弾するように言った。
「ありゃ詐欺だろ」
 当然の様に知らん顔をされる。
 だが、しばらくジッと睨んでやると、麻巳は根負けしたらしく弁解を始めた。
「買出しの後は、奥に引っ込んでそのまま小休憩。何年も前から同じなんですよ」
「それこそ確信犯じゃないか」
「母は、そうですね。最初から狙って面白がってる節があります。でも私は――去年くらいから、ですよ」
「なるほど、腹黒さは母親譲りか」
「そうですねー。その点は感謝してます。誰かさんを逃がす事なんて絶対に無さそうですから」
 むふふー、と含みのありそうな笑顔になる麻巳。そういえば忘れていたが、家族が――特に母親が大好きな麻巳は、自分では好き勝手言うくせに他人が何か言うと簡単に頭に血が上るのだ。相手が俺でも、それを冗談として受け取ってくれない。
 謝って見せれば後を引くような性格ではないのだが。なんとなく、それを続けていくと将来は○○天下な家庭が待っている気がする。かといって放置するのも問題だ。
 俺が、どう対処すべきかと頭を悩ませていた丁度その時だった。店の扉が開かれ、新たな客が『やどりぎ』に来訪する。見知った顔だ。
 それは、先日色々とあった藤浪朋子その人なのだった。



 麻巳によると、たまに来店する事はあるらしい。
 撫子学園美術部にはOBで最も顔を出す麻巳と、現部長の藤浪である。エリスや俺経由で何度も顔を合わせてもいたし、年齢の割に落ち着いているものの逆に過激な一面を持つ者同士、確かに気が合う部分も多いはずだ。仲が良いというのは実際に見て知ってもいる。
 ――だが、先日のやりとりの後で来店する意図が読めない。客として何度か来ているのなら、麻巳が居ることも知っているわけで。まさかとは思うが、覚悟を決めて対決しに来たのではあるまいな?
「な、なあ藤浪……」
 逃げ出す事も考えてはみたのだが、さすがに後始末を考えると思い止まるしか無かった。ならばと勇気を振り絞って声をかける。
「なにか用?」
 目の前に座る藤浪は、無表情のまま平然と応じた。
「いや、何というかだな……何のつもりなんだ?」
「だから、何がよ?」
 具体的に言えというのか。ホントは俺を苛めに来たんじゃないだろうな。
 ちなみに、
「……うふふふ」
 藤浪だけでも胃に穴が開きそうなのに、さらに傍に立っているメイドさんが怪しい笑いを漏らしていたりする。
 ――藤浪の分のコーヒーを持ってきた後、麻巳はそのまま居座っていた。怖い笑顔でずっと俺を見下ろしている。なんだか本当に悪い事をした気分になってきた。
 俺は君の笑顔が見たい、本当の笑顔を――とかなんとか。麻巳が好みそうな、頭の悪い芝居がかった台詞が脳裏に浮かぶ。普段なら『馬鹿な人』とか言いつつ満更でもない反応を見せてくれるが、今の状況だとどうだろう。真剣な話をしている時にふざけると物凄く怒るお方であるから、きっと口に出すのも恐ろしい結末を迎えるに違いない。――って結末ってなんだ、縁起でもない。
「それにしても、相変わらずね。この店は」
「……どういった意味でしょう?」
 藤浪が唐突に言った言葉に、過敏に反応する麻巳。俺に向けられていた視線がむこうを向き、俺はやっと息苦しさから解放され小さく息を吐いた。そして、どれほどの重圧に晒されていたのかを改めて知る。
「言葉どおりの意味ですけど」
 ツンと澄まして言った藤浪は、視線を店内を巡らせ、ゆっくりと一周してからやっと麻巳に視線を戻した。
「とても雰囲気の良い、コーヒーの美味しい最高のお店ですよね」
 初めて笑顔になりながら言った藤浪に、麻巳は毒気を抜かれたようだった。
「そ、そうですね……いえ、えっと、有難うございます」
 戸惑いながらも応えた麻巳は、ハッとして小さく深呼吸をしてから平時の営業スマイルに戻った。心の中で何らかの決着がついたのと、相手が客だと思い出したのだろう。
 それを確認するように、満足そうな笑みで何度か頷いてから、藤浪は言ったのだ。
「実は先日、この上倉先生に告白されたんです」
「なっ――えぇっ!?」
 過呼吸気味になりながら混乱しきっている麻巳は、意味の分からない言葉を垂れ流す。一度は落ち着いたため、心の準備が全て吹っ飛んだのだろう。こういった不意打ちに弱いのが竹内麻巳の短所であり、面白いところなのだが――よく知ってるなコイツは。
 両者をよく知っている俺としては、大体の意図が読めたので多少は肩の力が抜けた。要するにからかいに来たのだろう、俺達を。
 となると平常心を保てばそれで済む。俺はそれで良いとして、さてさて。
 いつまでたっても混乱しっぱなしの麻巳を見上げ、どうしたものかと思案した後――
「ほれ」
 目の前の温くなったコーヒーを差し出した。
 麻巳は一瞬動きを止め、そして受け取ると一気に飲み干す。カップを置いた時には何とか正気を取り戻していた。
「お騒がせしました……」
 しょんぼりしている麻巳はとりあえず置いといて、俺は藤浪に向き直る。
「――で、落ち着いたところでだ。とりあえず訂正だけはしとけ」
「はい、すみません。告白した、の間違いでした」
 藤浪は澄まし顔で、何でもないように言った。
「それで、仲良くやってるのを確認くらいはしておこうと思って。どうやら大丈夫そうですね」
 藤浪の視線は、明らかに麻巳の手に向けられていた。
 俺は先日、藤浪との一件もあって、麻巳に指輪を送った。豆粒以下のサイズではあるものの、一応はダイヤの指輪である。給料三か月分には大分届かない代物だし、婚約したわけでもない。それでも、初めて送った貴金属のプレゼントは、彼女を際限なく舞い上がらせた。
 店での仕事中は外すのが当然なのだが、父親になんと言われようとしばらくは外す気配が無い。贈った俺としても、そこまで喜んで貰えれば嬉しい。次はもっとちゃんとしたものを――と考えてしまいそうになる。そうやって男は身を滅ぼすのだろうが。
「お似合いです」
 笑顔で祝福の言葉を送る藤浪に、麻巳は顔を真っ赤にした。
「あ、ありがとうございます……」
 恥じ入っている麻巳だが、それでも礼は忘れない。最も、礼を言うのが正しい対応かは疑問が残るところだが。
「これで私も諦めがつきます。これからは思い出を胸に、前を向いて生きていくつもりです」
「藤浪さん……」
「そう、優しく慰めてもらった、告白の時の暖かい感触を胸に」
 藤浪が頬を朱に染めながらそう言った瞬間、背筋に悪寒が走った。その原因となったメイド――もといウェイトレスさんは、怖いくらい晴れやかな笑顔を貼り付けて小刻みに震えている。
 恐怖のあまり完全に凍りついた俺に向かって、藤浪は悪戯っぽく舌を出して見せた。そのまま立ち上がり、
「コーヒー、ご馳走様でした。お代は浩樹さんにお願いしますね♪」
 さりげなく名前で呼び、抜け目無く火に油を注ぎつつトレードマークの三つ編みを弾ませながら店を出て行った。藤浪の笑顔は明らかにお礼の意味ではなく、してやったりの満足気なものだ。
 その間、俺は一言も喋れないどころか指一本すら動かせない。弁解のタイミングは、硬直している間に永遠に失われた。
 笑顔を貼り付けたまま佇む麻巳さんは何も語らず、それが逆に不気味だ。藤浪が会計も済ませず店を出る時も『ありがとうございました』の一言すら無い。殺気を感じてか他の客達も何事かと視線を向けてくる。
 注目を集めていることに気付いたのだろう、唐突に麻巳は無言のまま俺の腕を掴んで強引に立たせた。そのまま店の奥へと引き摺られる。抵抗は――するだけ無駄だろう、明らかに。
「頑張れよ~、婿殿」
「麻巳ちゃん、死なない程度にね」
 恋人達の微笑ましい光景を目にして、麻巳の両親は無責任な言葉を浴びせてきたが――。
 もちろん、毒にも薬にもならなかった。



 店では他人の目もある。自室に連れ込んで問い質すつもりだったのだろう。
 しかし我慢し切れなかったのか、家屋部分に突入するとすぐ、廊下の壁に背中を押し付けられた。
「お、俺は頭を撫でただけで他に何もしてないぞ! そもそも、アイツは俺達をからかっているだけであってだな――」
 そこまで言って言葉に詰まる。俯いていた麻巳が顔を上げたのだ。
「ひ~ろ~き~さ~ん~?」
 俺を壁に押し付け、下から睨み上げてくる麻巳はもう笑っていなかった。目尻には僅かに涙が滲んでいて、怒っているというより拗ねているような表情。眺めているだけで、何か危ない感情が込み上げてきそうになるが――。
 正気を保てた理由は単純だった。掴まれた襟元が痛い、というか力が入りすぎて息苦しい。
「もう……勝手にしてくれ……」
 なんというか、やはり麻巳にはあらゆる意味で敵わないと思い知った。こうなると、状況がどうあれ降参するしかない。そもそも彼女を傷つけたのは紛れも無い事実なのだ。それで気が済むなら受け入れよう――そう思い、観念した俺は天を仰ぎながら静かに目を閉じる。
 だが、いつまで経っても怒りの鉄拳やら雨のような罵詈雑言やらは降ってこない。
 そのまま固まっている訳にもいかず、俺はしばらくして恐々と瞼を上げた。すると、不意打ち気味に麻巳の柔らかい唇に襲われる。
「お、おい……?」
 軽く触れるだけのキスだった。俺はようやく、彼女が何のために他人の目の無い場所へ移動したかを知る。
「文句の一つくらいは言うつもりんだったんですけど……。我慢している間に、こっちの方が大きくなっちゃいました」
 そう言ってから静かに身を寄せてくる麻巳を、強く抱き締めてやる。苦しいだろうほどに力を入れたが、それでも麻巳は幸せそうに身を預けてくれた。
「手を触れられない、でも放っておけない……だから、ですよね?」
 藤浪の頭を撫でたことだろう。俺は静かに頷いた。
「好きな女の子だから、じゃないですよね?」
「ああ。ただ部長として面倒もかけてるし、大切にしたい女の子ではあるな」
「またそうやって意地悪を言うし……」
 麻巳は拗ねたように顔を背けながら身体を離した。
「で、許してくれるのか?」
「抱き合ってすらいない無いのに、浮気を疑うのもおかしいじゃないですか。だから、条件次第で許してあげてもいいです」
「聞くのが怖いが……」
 三か月分――いや、三年分くらいは覚悟すべきだろうか。俺は覚悟しつつも、緊張からか思わず唾液を嚥下する。
 しかし、ピンと指を立てるお決まりのポーズで麻巳が言い出したのは、


「私をモデルにして、桜花展で金賞を取ってもらいます」

 なんてものだった。むしろ、金で済む要求より遥かに難しい。
 状況と麻巳の性格を考えれば、結果を求めない無茶な注文といったところだが、嘘とも真実とも判断つきかねる真剣な表情で言われては笑いを返す訳にもいかない。むぅ、と苦し紛れに唸る俺には目もくれず、麻巳はくるりと華麗に一回転した。
「さあ、そろそろ戻りましょう。……おと~さ~ん、終わったわよ~?」
 ぱたぱたと可愛らしい足音を残しながら走り去る麻巳だったが、何とか確認出来た耳たぶは真っ赤になっていた。切り替えた様に見えて、実のところ逃げ出したのだ。
 俺は呆然とその後姿を見送りながら、覚悟を決める。
 いくらなんでも無茶苦茶だ、とは言えない。この条件でも明らかに温情である。
 それにだ。自分を描いて欲しい、本気で絵に取り組んで欲しい、という押し殺してきた麻巳の本音。今回の経緯など関係なく、その心から溢れた言葉に応えてやりたいと思う。
 何年かかってもいい、俺は全力で桜花展金賞を掻っ攫おうと心に誓うのだった。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/09/14(日) 01:48:51|
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