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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

恥ずかしい行為

 美術準備室も大分ゴチャゴチャしてきたので、整理しなければならない。
 しかし、美術部の部長としてはそれを顧問にやらせるのも勿体無い。珍しく捕まえたのだから、今日は部活で指導をしてもらいたい所である。
「というわけで整理は私がしますから、今日は部活で指導をお願いします」
「……分かった」
 自分のサボリのせいで麻巳に雑用をやらせるのはさすがに気が引けるのか、浩樹は素直に頷き美術室への扉の向こうへと消えていった。



 一時間程が経過し、ようやく目処が立ってきた頃。
「お~い竹内、調子はどうだ?」
 浩樹が準備室へ戻ってきたので、麻巳は一休みがてら手を止めた。
「順調です。そっちはどうですか?」
「ボチボチだな。壁にぶつかってる奴も居ないし、俺の出番は概ね終了ってところだ」
「それでサボリですか。――絵を見て回ってアドバイスするくらいはしてくださいよ」
「自分なりで描いているのに、横から茶々入れるのは趣味じゃない。迷ったら面倒見てやるさ」
「先生は相談相手じゃなくて指導者なんですよ。まったくもう」
 呆れ気味に言う麻巳だが、言葉遣いはどこか柔らかかった。
 浩樹が押し付けた仕事を気に病んで様子を見に来たのかも知れないとか、これだけの時間を指導に費やしてくれたのなら大いに意味があったとか、あと労働の後だから(身体を動かすのが好きだから)というのもあって、少しばかり機嫌が良いのである。
 そんな空気を感じて、浩樹はホッとした。何しろ、聞き難い――どころではない事を聞かなくてはならない。
 一つ小さく息を吸い、ゆっくりと吐いてから麻巳の機嫌が良い事を表情から確認し、浩樹は控えめに声を掛けた。
「なぁ、竹内」
「はい?」
「お前って、白か、ピンクか、縞々か、それとも紐か?」
 流麗な眉が僅かに跳ね上がった――様な気がした。だが気のせいだろう。何しろ麻巳は笑顔である。
「何の質問か見事なまでに分かりませんけど。……柄と紐は共存出来ないんですね」
 先ほどまで晴れやかな感じだったのが、今は作り物のように感じる。しかし、それでも間違いなく笑顔だ。
 ――ならば大丈夫。安心してもう一歩踏み出そう。間違いは、しっかりと正さねばならない。
「そうだな。両方でも構わんが……紐ってのは全部が紐だから柄が無いんだよ」
「へー、そうなんですかー」
 麻巳の笑顔が晴れやかなそれに戻った。これ以上無いほど大げさに笑っている。声は平坦だが、それこそ気のせいだ。浩樹も笑いながら、
「ちなみに、お前さんの下着の話な」
20080526_358393.jpg
Sketches and company(ブタベストさん)


 ははははー……と誤魔化し笑い。対する麻巳は、変わらず笑顔なもののコメカミの辺りに血管が浮き上がっていた。今にも切れそうなほど大きく、太く、ハッキリと。
「そうですか。……そうなんですか。人がせっかくスルーしてあげようというのに、そんなに要らない命なら摘み取って差し上げましょうか?」
「ま、待て、俺は別にセクハラをしたいんじゃないっ。男子部員の連中から訊いてくれ、と頼まれただけだ!!」
 作り笑顔もついに限界か、麻巳はいつものお説教モードに突入した。
「十分セクハラですっ!! 第一、教師としてその場でちゃんと断って下さいっ!」
「いや、俺も知りたかったし」
「……っ!」
 不意打ちだったのか、麻巳は気勢を削がれて言葉に詰まる。
「何を言っているんですか!? は、犯罪ですよ、犯罪!」
「いや、一面を見ればそうかも知れない。しかし絵を描くものにとって、興味の対象をどこまでも知ろうとするのは大切なことだぞ?」
「限度が有ります!」
「あいつらだって、美人の部長が居たら気になるに決まってるじゃないか。オレだってそうだ」
「~~~~~っ゛!」
 自信満々に断言した浩樹に、麻巳は真っ赤になって押し黙る。
 浩樹にとって、これは最後のチャンスだった。目的を果たすよりもこの場をどうにか生き延びるため、必死に言葉を重ねていく。
「というわけで竹内、教えてくれ」
「な、何言ってるんですか。そんな恥ずかしいこと、よく真顔で言えますね……っ!」
「美術を極めるのに恥ずかしいなんてことは何もないっ!!」
 確かにまあ、裸体を描くのは珍しい事では無い。そう思い至り、麻巳は考えを改めざるを得なくなった。
「そ、その。美術のため、ですか……?」
「他の何だと思ったんだ」
 ぽかんとする麻巳の表情に、一瞬ドキリとする浩樹。いかんいかん、相手は生徒だぞと内心の動揺を押し隠しながらも口からは次々とでまかせが飛び出てきた。
「目の前に綺麗な女性が居る、絵に描きたい。その内面はどうなっているんだろう? ……当然の疑問だ。それを知る第一歩、それ以外に何の意図も無いよ」
「それじゃ、その、絵を描くため、ということなんですか……?」
「俺は絵描きだ。それ以外に何がある? 竹内が怒るのも無理は無い。だが、それでも……内なる欲求は、絵を描きたいという根源的な、魂の燃えるような衝動を抑え切れなかったんだ。悪かった、もちろん無理強いなんてしない。竹内が嫌ならこの話は無かったことにするよ」
 やっと予定通りの着地点に辿りついた。後は勢いに任せて逃げるだけ。そう思い、浩樹は必死の思いを何とか抑えてゆっくりと美術準備室を出て行こうとする。
 その背中を麻巳が呼び止めた。
「ま、待ってくださいっ!」
「……ん?」
 動揺を押し殺し、何とか答える浩樹。
「そ、その……。絵を描くため、なんですよね?」
「ああ」
「他意は無い、んですよね?」
「もちろんだ。美術家に二言は無い」
 ――と、答えておくしかない。
「なら、その……えっと……期待はずれかも知れませんが……」
 麻巳の手が、そっとスカートの裾に伸びる。考えもしない展開に、浩樹は情け無いくらい狼狽した。
「ち、ちょっと待て! 別に見せる必要は無いぞっ!?」
「いいえ、先生! どうせなら見たほうが良いに決まってます! 折角、先生が絵を描く気になってくださったんですから、私だって本気で助けになりたいんですっ!」
 麻巳はノリやすく、つまり騙しやすい。それを利用して言い包めた浩樹だったが、重要な事を忘れていたのだ。丁度良い所で止まるという事を知らない、ノンブレーキかっ飛び娘だということを。
「だからって、おい、ちょっと待て、本気かお前!? さすがにそれは犯罪だ――」
20080527004621.jpg(完全版はこちら)

 茹蛸状態の麻巳は、浩樹の言葉に構わずスカートをたくし上げる。今度は浩樹が呆然とする番だった。
 そして――。
「上倉せんせー、結局どれだったんですか~。賭けが終わらないんですけど~」


「だーっ! 今行くから入ってくんなっ!」


「先生が自信満々で行った割には時間かかりすぎだからですよー」
「いいから美術室に戻れっ! 絵を描け絵を! お前等それが仕事だろうが!?」
「部活は自由ですよ。仕事なのは先生だけです」
「屁理屈はいいから早くいけっ!」
 ぶーぶー言いながらも部員は美術室へ戻っていった。
 残されたのは、脂汗にまみれた美術教師が一人と、スカートをたくし上げる手をぶるぶる震わせている女生徒が一人。
 麻巳はゆっくりとスカートから手を離し――浩樹の目には、スカートが元の状態に戻るまでがスローモーションの様に見えた。
「上倉先生?」
 一縷の望みとばかり振り向いてみるが、当然ながら誰もいない。
「はは……。えと……その……なんだ。竹内さん?」
「賭け、って。何の事でしょう?」
 視線だけで凍りつきそうなほど冷たい目で見つめられて、浩樹はまたドキリとさせられた。ただし先ほどとは見事に真逆、どちらかというと命の危機に晒された時のそれである。
「いや、俺は別に『親』ではないぞっ!?」
「つまり、賭けてたんですね?」
 苦しい言い訳を試みるも藪蛇だった。
 哀れな美術教師には、もはや誠意を見せること以外の選択肢は残されていない。全力で何度も何度も、首が外れそうな勢いで頷いた。
 対して麻巳は爆発するかと思いきや、再び笑顔になって淡々と言葉を重ねていく。
「最低です。酷いです。人を言いくるめて、恥ずかしいことをさせて」
「ま、待て、落ち着け。オレは美術部の発展を願ってだな……。大体、見せろとまでは言ってないぞ!?」
「覚悟は良いですよね? ――良くなくても考慮するつもりは毛頭ありませんが」
「訊いといて無視するのかっ!? ってか見せたのブルマだけだろ!」
「じゃなきゃ見せる訳が無いじゃないですかっ!」
 そこでようやく、般若が降臨した。
「なら怒る理由も無いはずだっ!」
「問答無用ですっ!! 大体、行為自体が恥ずかしいじゃないですかーーーーーっ!!! イーゼル召還っ!!!!」
「ま、待て、それは作品がちがうっ!!」
「砕けっ!! わが奥義っ」
「わ、悪かった、助けてくれっ!」
 必死で謝るが、さすがにもう遅すぎた。
「せんせー、結局どれなんですか~」
 緊迫したこの状況で、美術室から場違いに過ぎる間延びした声が響いてくる。お前ら絶対分かってて遊んでるだろ、と思いつつ浩樹は絶叫した。
「呑気で羨ましいぞっ! でも後で覚えてろよ!?」
 それが、浩樹にとって最期の言葉となり。
「死んで下さいっ!!」
「ギャーーーっ!!」
20080526_358396.jpg
Sketches and company(ブタベストさん)




 その後、彼がどうなったかはご想像にお任せする。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/05/28(水) 00:09:24|
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