竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

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華麗なる食卓(瑛里華SS)

「あ、ありがとう」
「紅瀬の料理が良いヒントだったよ」
 やっぱり。――想像通りの種明かしに、瑛里華は伝え聞いた話を思い出していた。
 調理自習、真っ赤なオムレツ。その色は100%唐辛子。味見した孝平は記憶が飛んだとかなんとか。陽菜は楽しそうに話していたし、瑛里華もそうだったが、その時はまさか自分が味わう羽目になるとは思わないからこそである。
 今、瑛里華の目の前にあるのも赤いオムレツだった。しかし考えてみれば、血を入れたのならその色のはずだ。赤がそのまま辛さという訳ではない。
「あの……」
「ん?」
「やっぱりなんでもない」
 味見をしてもらおうかと思ったが、慌てて口を噤む。本人は言わないが、孝平は味見する訳にもいかないのだ。
 普通の人間が血液を口にするのは、信仰が無くとも禁忌に属する行為。それでも頼めば嫌とは言わないだろうが、それは瑛里華自身が嫌だった。
 彼は、それを口にする自分を受け入れてくれている。それだけで十分だ。いや、それどころかこんな手間のかかる努力までしてくれている。
 応えるには、さて、どうするべきか。
 決まっている。自分を受け入れてくれる彼の、こんな優しさを無駄には出来ない。受け入れてしまえばいいのだ。
「どうした?」
 心配そうに尋ねる孝平の顔を見上げながら、瑛里華はむしろ素直に感想を口にする。
「味を想像してたの。色が、ね」
「ああ。赤いのは血だぞ? さすがに紅瀬のをそのままじゃ、人の食うもんじゃないだろ。いや人じゃないのかも知れんが、味覚は同じだろ?」
「ええ」
「前提としてあの料理があるし、辛さがあるなら赤さも気持ちとして誤魔化せると思ってさ。血の生臭さも辛味で消せるはずだ。まあ、試しに食ってみてくれ。唐辛子の量は感想聞きながら次は調整するし」
 次があるのか。いや怖がるな。集中しろ。美味しければどうという事は無い――。
 不安を無理矢理な自己暗示で封殺しながら、瑛里華は端の方を小さく切り取って、真っ赤なオムレツを口に運んだ。
「……っ゛!?」
 そのまま、真っ青な顔で固まる。
 口内に広がるのは濃厚な血の臭い。そのまま飲んでいるのと変わらない風味だ。そこに七味唐辛子――孝平は間違えて一味ではなく七味を使った――が絶妙に混ざり合い、なんというかエグかった。
 舌が蕩けそう、というのはよく使われる表現だが、これは内蔵まで溶けそうなほど刺激的だ。はっきり言えば芸術的に不味い。
 だが、それを正直に言って、果たして彼の苦労は報われるのだろうか。
「あくまで実験だから、無理に食べなくてもいいぞ?」
 心配そうに、そう言ってくれる孝平。むしろそれで覚悟を決めた。
 真っ青な顔のまま、瑛里華は残りのオムレツを急いで口の中に押し込む。卵一個分だった事だけは感謝だ。倍あったら命に関わる。
 口元を押さえながら何とか呑み込み、それから水で駄目を押す。少しでも薄めないと、後で身体がどうにかなりそうだった。
「おいおい……」
 呆れたように漏らす孝平に、
「う、嬉しかったのよ。行為自体は」
 瑛里華は力なく机に突っ伏しながら――そう誤魔化しながら、顔の半分だけでもと火照った顔を隠した。
「味は……聞くまでも無いか」
「食べられたものじゃないわね。辛すぎ。生臭いし。それらが混ざり合って、殺人的にエグイわ。あなた、不味い料理の鉄人だったの?」
「そこまで言うなら残してくれても良かったんだけどな」
 むしろそれが前提だったのだろう。瑛里華も分かってはいたが、それでもゴミ箱行きだけは断じて認められなかった。
「私のために考えてくれたんだから、残せるわけが無いでしょう? そもそも簡単に食べ物を残すって言うけど、捨てるのと同義よ。そういう誤魔化しの言葉、私は嫌いなの」
 ちょっぴりご機嫌斜め。それを装うことで何とか平静を保ち、身を起こす瑛里華。
「まあ、らしいっちゃらしいか。俺も今後は見習わせてもらうよ。なるべくな」
 学食の鉄人が作るサービス過剰な料理を思い出し、孝平は一応の予防線を張っておく。
「とはいえ、そうね。またの機会があれば、今度は遠慮せずに残すわね」
 きっと口だけだろう、また無理しても食べるに決まっている。
 そう考えた孝平の思考を読んでいるかのように、瑛里華は悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「もちろん、残った分はあなたが食べるのよ?」
 孝平は、本気の可能性あり、と心の中で訂正を加えておいた。
「でも、今日のところはここまでにして。お願い」
 言われるまでも無かった。気丈に振舞ってはいるが、かなり顔色が悪い。
 どこまで無理して食べたんだ。酷い料理で有名な某TV番組だったら、きっと一口目でエチケットルームに駆け込んでいることだろう。
 そうは考えつつも、孝平にとって残さず食べてくれるのは嬉しいことだ。分かりやすく感謝の気持ちが伝わる。しかし、同時にプレッシャーでもあった。
 我慢して食べたとはいえ、続けて何度でも付き合うほど過剰にお人よしではない瑛里華である。本気で嫌なら気持ちだけで嬉しいとでも言って終わりになるところだが、止めろと言わないのだから、彼女としても有意義な行為だったのだろう。
「それにしても、どうして人血ってのは、そこまで生臭いんだ?」
「さあ。通常の味覚で感じているのではないのかも知れないし。まあ人間だって生物、血液は生もの。時間を経れば劣化するのは当然だわ。成分的には問題無くても、味は誤魔化せないんでしょうね」
「なるほど……。まあ、今回は手を抜きすぎたかな。やっぱりカレーに少しずつ足して問題ない程度の量にするのが一番か」
 思案顔で呟く孝平の言葉を聞きとがめ、瑛里華は呆れ顔になる。
「あなたね。最初から、どうしてそうしないの?」
「やるとなれば、スパイス揃えて本格的になる。寮には作れる場所が無いし、買い物にも出なけりゃいけないし。色々と面倒だからな」
 それに、家庭科室を使うとなれば放課後になってから煮込むことになる。しかも血を入れる以上、他の連中には振舞えない訳で、分量の問題もオムレツ以上に深刻だった。
「それもそうね」
 瑛里華もあっさり納得する。
「それに、カレーなんて市販のルーでしか作った事が無いんだよ」
「それでも十分だと思うけど……」
「いつも自分で言ってるじゃないか」
「え?」
「そいつはきっと、エレガントじゃないぜ? 労は惜しむな、って今回で身に凍みたしな」
 料理は愛情。手間隙かけて、それを見せずにそっと出す。気付きつつも、ただ感謝の言葉だけでそれを讃える。確かに、エレガントかも知れない。
「ふふ。分かってきたじゃない」
「いつも身近で言われてるからな」
「なら、次は期待してるわね」










 >>おまけ
「でも、どうして急にこんなことを? しかも、随分頑張るじゃない。ただの思いつきにしては」
「一緒に食べられるものがあれば、少しは共有出来るんじゃないかと思ったんだよ」
「私達だって普通の料理も食べるわよ。消化もするし。吸収はしないけど」
「そういう意味じゃなくて。生きる糧を共にする、って思想が食事にはあると思うんだ。人間は血を必要としないが、毒物ってわけじゃない。食べられるなら、一緒に食べれば凄く有意義じゃないか?」
「――そういうの、忌避感は無いの?」
「自分にとっては忌むべき体質だろうけどさ。別に取って食うわけじゃないんだ、仕方ないことなんだよ」
「ええ、そうね。兄さんはそうとも言い切れないけど」
「ま、まああの人のことはともかく」

 流しちゃっていいの? と視線だけで語る瑛里華。でも言葉にはしない。

「食事ってのは楽しいものなんだ。皆で一緒だと特に。生きていくためのエネルギーだ。いつも嫌々なんて、それこそエレガントじゃないだろう?」
「ふふ。なんだか、他人から強調されるとくすぐったいわね」
「俺の気持ちも少しは分かってくれたか」
「ええ。いいんじゃない? 期待してるから、次も頑張ってね」

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/02/07(木) 01:26:15|
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