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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

猫たちの楽園

「ゲーム……ですか?」
「おう。トランプ切って、適当に二枚引く。で、どっちが大きいかを当てるだけだ。竹内が当てたらお前の勝ち、外したら俺の勝ち。簡単だろ?」
「そうですね。確かに簡単ですけど……どうしてそんなことに付き合わなければならないんですか?」
 またくだらない事を始めた――と、麻巳は疑わしそうな目で浩樹を見やる。
 ここは美術準備室。放課後、急いで来た麻巳は案の定帰り支度を整えた浩樹を捕まえ、いつも通りの押し問答を始めたところだった。
「そんなことより部活に出てください」
「いや、いや、待てってば。捕まったからには出ることもやぶさかではないのだが、俺が渋々出るのと、喜んで出るのと、竹内はどっちが良いと思う?」
「後者に決まっています。もっとも、そうはいかないとも分かってますから。とにかく出てくだされば、あとは無理矢理にでもどうにかします」
「しかし、俺をやる気にさせる方法があるとしたらどうする?」
「それはもちろん、それに越した事は無いですけど……。何か企んでますよね?」
 無言で笑顔だけを返す浩樹を、麻巳は疲れたように眺める。だが、こうなったらもう仕方が無い。
 何だかんだで口では敵わないと、麻巳は既に認めていた。何しろ部長に就任した当時、部活に引っ張り出そうと奮闘する麻巳が、何度適当な誤魔化しで煙に巻かれたか知れない。今は多少マシになったとはいえ、この人が本気で悪戯モードに入ると結局遊ばれて終わるのだ。
 浩樹は口が達者な方でもなく、単に麻巳にとって相性が悪いだけで、逆の立場である浩樹は珍しいそうした相手が楽しくて仕方が無いのだろう。
 麻巳にとって迷惑この上ない話なのだが、そのお陰で多少は部活に出る気になってくれるのだから、部長の立場では諦めるしかない。とんだ貧乏クジである。
「それで、私の罰ゲームはなんですか?」
「おいおい。やる前から負けるつもりでいたら、勝てるものも勝てないぞ」
「仕方ないじゃないですか。私は不器用で、運も無いんです。始めてやるゲームで勝てるとは思いません」
「よくまあ、言えたもんだな……」
 誰がどう見ても理想的、知的で真面目で有能な文科系最強(強?)の部長と評される人物がよくも言う。麻巳は自分を卑下するところがあり――いや、今はそれはいい。浩樹はにこやかに罰ゲームを指定した。
「本気ですか?」
 珍しく動揺を見せる麻巳に満足し、浩樹は頷いた。
「もちろん」
「どちらにしろ、部活には出てくださるんですよね?」
「ああ。ただしゲームをやらないなら、多少強引にでも帰るぞ」
「……う~」
 見透かされ、もはや麻巳には唸るくらいしか選択肢が無かった。



 こうなったら勝つしかない。そう決意し、浩樹に挑んだ麻巳は――。
「よ~し、みんな集まれ。特に男子ども」
 あの後、ゲームを終えた浩樹と麻巳は、揃って美術室へ移動していた。ちなみに勝負の結果は、最初に麻巳が断言した通りである
「実はだな。普段から頑張っている諸君のために、部長が一肌脱ぐことになった」
 意味が分からず、部員達はポカンとしている。
「さあ、望みを言え。望む姿を、部長が一つだけ叶えよう!」
 美術室内はどよめき、次いで歓声に支配された。
 部長・竹内麻巳の部内人気は侮れない。何しろ、綺麗で有能で顧問以外には極めて優しく、その顧問より遥かに頼れる人物である。男子・女子を問わず――というか副部長の田丸ひかりが一番黄色い声で騒いでいた。
「あ~、ちなみにエロイのは無しだぞ」
 ガッカリする男子一同。殺気の篭もった目でそれを睨む女子一同。
「じゃ、じゃああのその!」
 興奮気味に声を上げたのは、副部長の田丸ひかりだった。
「なんだ?」
「メイド服! これなら……ありですよね!?」
 再び、男女問わずどよめく美術部員一同。実家の喫茶店でメイド服姿で働いている事は知られていたものの、それを見に行くのも物理的に後が怖いので実行する者はまだ居なかった。これは確かに、それを目にする千載一遇のチャンスである。
 ふむ、と考え込み――浩樹は麻巳に視線を送る。すると麻巳は、両手で大きなバッテンマークを作っていた。
「それだけはぜっっっっっっっったいに駄目っ!」
「え~、そんなぁ」
 不満げな声を上げた女子部員を、麻巳は必死の形相で睨んだ。かなりテンパっている。
 勝負に負けた以上、麻巳は約束を守るはずだ。それは分かっている浩樹だが、あまり無理強いし過ぎても面白味に欠ける。恥ずかしがるだけなら面白いが、泣きそうな顔をされては洒落で終わる空気ではなくなってしまう。出来れば少しでも納得させてからにしたい。
 それにはルールだ。竹内麻巳はルールを守る人間である。自ら納得して課したルールであれば、自ら率先して守るだろう。まして、予め妥協してあれば尚更だ。
「よし、では拒否権を三つ与える」
「……えっと?」
「だから、リクエストのルールだ。それに沿った形のものだけ受け付ける。その三つは、竹内が自分で決めろ。それで出たものなら、いいだろう? ここまで譲歩すれば納得出来るはずだ」
 麻巳は顎に手を当てながらしばらく考え込み――ウロウロしたり、腕を組んだりして更に更にと時間をかける。そしてようやく出した結論は、
「制服のまま、眼鏡は外さず、髪形も変えない。これでどうでしょう?」
 にこやかに、勝利を確信しながら麻巳は言った。
「むぐっ……。そうきたか」
「約束は約束ですから。先生から言い出したことですし、守りますよね?」
 何か突破口は無いものか。頭をフル回転させる浩樹。しかし、妙案は何も思いつかなかった。
 おのれ、あと一歩のところで。こんなところで諦めてたまるか。何か、何か――。
「あの」
 浩樹が必死で頭を絞っている時、エリスが恐る恐る手を上げた。
「こんなのは、どうでしょう?」



 翌日の放課後、美術室。
 エリスが約束どおり調達してきたのは、ネコミミと尻尾だった。
「朋子ちゃん、猫好きで可愛い小物とかも好きだから。前に見せて貰ったのを思い出したんです」
 ニコニコしながら、麻巳に差し出すエリス。悪気は無い。単に部長の可愛い姿が見られると期待しているだけ。
 麻巳の反応は照れているだけだと、そう確信してしまっているだけ。
「あ、ありがとう、鳳仙さん……」
「いえいえ、このくらい何でもないです」
 その輝くような笑顔が、今は恨めしい。
 それ以上に、こういう時だけ率先して部活に出てくる顧問が憎らしい。
「うぅ。どうして私がこんな目に。ただでさえ普段から苦労させられているというのに……」
「どうした~、竹内。具合でも悪いのか? 何なら後日メイド服にネコミミでもいいぞ?」
「今やりますっ!」
 自棄になって言い返し、麻巳はそのままの勢いでネコミミと尻尾を身に着けた。
 困ったような顔で、所在無げに佇む知的な少女の可愛らしい姿に、美術室内は溜息で満たされる。麻巳はダッシュで逃げ出そうかと本気で考えたが、後で更に罰ゲームだとあれこれやらされそうで、それを想像しながら何とか踏みとどまった。
「猫――といえば鳴き声だな」
 浩樹の何気ない呟きに、麻巳の肩が震える。
「や、やりませんよ? これだけでも精一杯なんですから」
 何とか言い返す麻巳には目もくれず、浩樹は美術部員たちを振り返った。
「お前ら、猫の鳴き声と言えば?」
「にゃーにゃーっ!」
 大合唱である。もはや収拾がつかない。もちろん、部活は中断中。――そうきたか。
 諦め、自棄になって麻巳は言った。
「に……にゃぁ……」
 おっかなびっくりの小さな泣き声は、それはそれで好評だったそうである。





「部長がこの格好なら、上倉先生も部活に出てくださいますよね♪」
 そんな副部長の無邪気な一言に、場の空気も手伝って一週間ほど猫を飼う事になった美術部である。
 ちなみに顧問が世話をするわけではなく、猫が顧問の世話をしている。苦労ばかりで実に割に合わない。
 もちろん見返りを求めているわけではないのだが、苦労人の麻巳としても苦労ばかりが上積みされては理不尽を感じる神経だってあるのだ。
 何かこの晒し者状態を是正する妙案は無いものか。毎日、そんなことばかりを考えて一日を過ごす麻巳は、ある時ふと思いついた。
 赤信号、皆で渡れば怖くない。
 そんなわけで。ある日、美術室にて猫が増殖した。


 副部長やエリスは、そもそも乗り気であった。
 可奈も乗り気で、編集の紫衣さんを通じて人数分を用意したのは彼女だった。
 たまたま居合わせた菫と朋子は――そんな可奈とエリスに捕まった。
 そんなわけで。

「にょわっ!?」
 アホな声を上げて後退ると、浩樹はそのまま固まった。
『『にゃんっ♪』』
 ノリノリで―― 一部例外あり――ポーズまで付けて鳴く美少女猫軍団。後では美術部員たちが黙々と絵を描いているのがある意味怖い。その猫たちを必死で描いていたりするのだが、もちろんそこまでは知らない浩樹である。
「お、お前ら……何してるんだ?」
「何って、猫ですよ。にゃん、にゃん♪」
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「急に弾けたな、竹内……」
 呆気に取られて呟く浩樹。麻巳はむしろ誇らしげに応えた。
「一人だから恥ずかしいんです。これだけいれば、大したことはありません。そんなことより……かかれ~っ!」
 麻巳は浩樹を指差し、子分猫達に指示を出した。
『獲物じゃ、獲物じゃ~♪』
 可奈とエリスが率先して飛び掛る。
「そ、それじゃあその……えいっ」
 菫が控えめにそれに続く。
「わ、私はいい……」
「まあまあ」
「そう言わずに」
「ちょ、ちょっとっ!?」
 尻込みする朋子の肩を左右からガッチリ掴み、麻巳とひかりが強引に巻き込んだ。
「お、おいっ、何事だいったい!?」
 浩樹は猫達に揉みくちゃにされながら悲鳴を上げ――
「すみませ~……ん゛っっ!?」
 そこで都合よく現れた体育教師の桔梗霧先生と、目を合わせて硬直した。
「なっ、なにしてんの浩樹……?」
「これはその、なんというか。不慮の事故というかだな……」
「先生。それは、どちらかというとこれから起こることだと思いますよ?」
 麻巳がそう言いながらにこやかに離れると、他の猫達もそれを合図に離れる。
「このっ……変態教師!」
 霧さん怒り鉄拳が顔面に直撃したのは、その直後であった。



 ちなみに霧を呼んだのは麻巳である。以後、猫は無しで浩樹は部活に出ることになった。
 むしろ猫を止めてくれたら部活に出る、と願い出たらしい……。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/12/11(火) 23:34:42|
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