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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

Chapter 4-3

 撫子学園にも近い公園のすぐ隣に、『やどりぎ』という名の喫茶店がある。私の実家であり、生まれる前からここにある、さして大きく無いながら妙に味わいのある店だ。
 店そのものもそうだけど、名前が決まるまでにも苦労があったらしい。何しろ父はコーヒーを淹れるのは誰より達者だが、他は見事に役立たずだ。細かい事は母が調整するしかない。
 母が悩んだ末にまず決めたのは『四文字』ということ。
 こもれび、そよかぜ、さざなみ、ひだまり――。こういった言葉は心地良く響き、安らぎを与えるのだそうだ。当時まだ幼かった私には理解出来なかったけれど、色々と医学的な考察も聞いた気がする。そうして母の感性で、最終的に選ばれたのが『やどりぎ』だった。
 父が殆どの場面で頼りにならないのは現在も変わらず、母は実に手際よく、楽しげにその穴を埋めて余りある働きを見せる。
 家事も仕事も万能ぶりは大したものだけれど、それ以上にストレスを感じない性質こそが凄い。母は私にとって理想とする大人であり女性であり、将来はあのようになりたいと思うけれど、娘で遊ぶのだけはやめて欲しい。
 母は、あのメイド風のウェイトレス服だけでなく、手作りの可愛らしい服を色々と私に着せようとするのだ。
 もちろん、それらは母の趣味であり、断じて私の好みが反映されているわけではない。困ったものだ。――本当に。
「それにしても……」
 私は誰に向けるでもなく小さく呟いた。
 ――弱々しい冬の日差しが差し込む店内で、食器を片付けながら先日の美術室での一件を思い出す。
 このウェイトレスの制服さえもう少し大人しいものだったなら、ああいった騒ぎにはならずに済んだのかも知れない。そう考えると、少しだけ恨めしい気持ちでお気に入りの服を見下ろしてしまう。
 いや、別に気に入っているわけではなくて。母が頑張って作った服だし、もちろん嫌いなわけでもないんだけど。
 まあ、服装についてはともかく。
 あの後、美術室に戻った私は、特に騒がれる事も無くキャンバスに向かうことが出来た。部活が終わった後でも、他の部員達が騒いだり、問い詰めてきたり、帰宅時に大勢で付いてきたりといったことは無かった。
 この件に関しては、上倉先生と鳳仙さんがかなりの労力を払ってくれた。だいぶ責任を感じていたらしく、部員たちには色々と約束を取り付けたらしい。
 彼らの働きと、楓子の言葉と、実際に私が嫌がるのを知って自重してくれる部員達の姿と。私のためを思っての行動を実際に見て、感じて。私は大いに感動し、何だか肩の荷が軽くなった気がした。
 結局、キャンバスに向かっても軽々と筆が動くという事は無かった。それでも、なんだか暗い気持ちが薄らいだ一日ではあったのだ。
 そんなこんなで、今日の私は比較的上機嫌だった。気持ちを誤魔化しながら労働に励み、諸々を忘れる――。そういった日が多かったのに、今日は素直に店の雰囲気に癒されていた。
 自然と湧き出てくる、柔らかな笑顔。そういったものは伝わる様で、お客さんも何だか上機嫌でくつろいでいる。悪くない。今日なら上倉先生が来ても、優しく相手をしてあげようという気分にさえなる。
 そういえば。いつも通りなら、そろそろ彼が来るのではないだろうか。そう思い、店の入り口に視線を向けると、丁度良く扉が開く。
 私は笑顔でお客様を迎えるが、期待に反してそれは上倉先生ではなかった。
 高校生くらいの男性が一人、落ち着かない様子でこちらを見ている。――こんな奇抜な格好で出迎えるわけだし、そういった反応にも慣れたものだけど。
「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
 普段と変わらぬ営業スマイルでそう言った私に、彼は遠慮がちに尋ねる。
「はい。あの、えっと。もしかして……部長さん、ですか?」
「え? ……あっ!」
 私は驚いて声を上げた。
 彼は先日、入部したばかりの美術部員だ。私服だと印象も大きく変わるので、すぐに気付かなかったのも無理は無い。
 しかし、そんな日の浅い彼が、一目で私の正体を見抜けるものだろうか?
 私が考え込むようにしていると、雰囲気から察したらしい。彼はバックからスケッチブックを取り出し、中の絵を私に見せた。
「あの後、部長には秘密でスケッチ大会ということになったんですよ」
 そこにあった絵は、普段の学校での私に適当な給仕姿を当てはめた絵で――。さらに詳しく聞いてみると、上倉先生が美術室での一件を納めるために、ちょっとした課題を出したらしい。
 簡単にまとめると『メイド姿の部長を想像だけで描き、一番似ていた人間を実際に店に連れて行き、好きなものを奢る』とか。
 ちなみに優勝者は鳳仙さんで、この反則技には皆怒りはしたものの、あまりに見事すぎる絵に見入って毒気を抜かれた者が殆どだったらしい。全部計算してのことなら先生も相当なものだけど、きっと適当に切り抜けただけだろう。まあ、それはそれで凄いのかもしれない。
 ――つまるところ、鳳仙さんの絵があまりに似ていたため、付き合いの短い彼にも私の正体が見抜けたというわけだ。
 それにしても。他に三つ編みだのツインテールだの、私が以前に変装で考えたものもあったらしいが、その辺りはさすが芸術の園。大した妄想――もとい想像力である。
「ブランクもあるし、リハビリも兼ねて公園でスケッチでもと。――正直、あの時は皆があそこまで騒ぐのが不思議だったんですけど。今ならその気持ちも分かりますね」
 彼は緊張した面持ちで、それでも興味深そうに見惚れている。
「そ、そう。ありがとう……」
 私は気恥ずかしさに耐えながら、何と言ったものかと思案していたが、自分でどうにかする必要は無かった。
 中の様子に気づいていたのか、扉に付いた鐘を鳴らさないよう忍んで入店してきたお客様が、
「営業妨害も程々にしとけよ~」
 ――お客様、改め冷やかしの上倉先生が、彼の肩をガッチリ組みながら言った。ちょうど、にゅっと肩口からもう一つの顔が生えてきた感じだ。
「あ、せ、先生!?」
 彼は驚き、慌てだした。
 ああした課題、報酬がある以上、一応は来店する事が禁止になっているのだろう。偶然なのだから構わないと思うのだが、その真面目さには好感が持てた。
 案内するまでも無く、先生は勝手にテーブル席へと彼を連れていく。――もはや自宅のような気安さだった。まあいいけど。
 私は後を付いて歩きながら、呆れて言った。
「先生がそれを言いますか」
「俺は上客だと思うんだが」
「コーヒー一杯で粘る人を上客とは言いません。営業妨害とまでは言いませんけど」
 その一杯も奢らせようとするこの人を、私が当然のように『冷やかし』と評価するのはどこも間違ってはいないはずだ。
 嫌味を込めて言った私の言葉を、しかし先生は大して気にせず、
「ん~、まあそれはそれだ」
 気の抜けた声でそう言いながら、勝手に選んだ窓際のテーブル席に座る。
「で、お名前は?」
 向かいに座らせた男子生徒に向かって、先生は当然のように言った。
 彼は美術部員で、先生は言うまでも無くその顧問で――。あんまりと言えばあんまりだ。
「顧問なのに、部員の名前も覚えていないんですか」
 軽く落ち込んでいる彼の代わりに、私は大仰に嘆きながら言った。先生は、そんな私を面白がるように眺めている。
「顔は見た事あるんだけどな。部長は知ってるのか?」
「当たり前です。この前、新入部員として紹介したじゃないですか。一年生の佐々木君です」
「佐々木? う~む……」
 腕組みしながら考え込む先生だったが、いくら待っても答えは出そうに無かった。
 先生は早々に諦め、
「佐々木、何君だって?」
 本人に聞けばいいものを、わざわざ私に向けて尋ねた。
「え? え、えーと、ですね……」
 私は職業柄――部長というより客商売の娘として――人の顔と名前を覚えるのは得意な方だ、と思う。
 しかし、まだ入部してから日の浅い彼の名前は実のところうろ覚えだった。先ほどは苗字だけで誤魔化したが、本来なら下の名前まで呼ぶ状況というのはあまりないので、それで十分のはずだ。
「分からないのか?」
 ――十分のはずなのだが、先生はあえて聞いてくる。軽い仕返しのつもりか、目が挑戦的だ。
 不本意とはいえ顧問を叱咤する部長としての立場が、意地がある。ここは引くわけにはいかなかった。
 微妙に自信は無いが、多分、いやきっと大丈夫。
「佐々木康祐(こうすけ)君、ですよ」
 恐る恐る言うと、その佐々木君はガックリと肩を落とした。
「僕、康裕(やすひろ)なんですけど……」
 私は思わず呻き声を漏らした。
 部員名簿の名前をちらりと見ただけで、積極的に暗記したわけではない。それでも覚えたつもりではあった。しかし、どうやら漢字が微妙に間違っていたらしい。そもそもの名簿が間違っていたのか、覚え間違いかはわからないが。
 そういえば、その名簿は先生に作ってもらったことを思い出す。しかし、それでも任せたのは自分であるし、確認した時に気付かなかったのだから同じことだ。
 理由はどうあれ。部長の立場としては、あまりよろしくない事態だった。
「あ、あはははは。惜しい、80点!」
 笑って誤魔化そうとする私に、先生は冷たく言い放った。
「……酷い部長だな」
 鋭い言葉が、私の心に深々と突き刺さる。いつも似たような言葉を向けている相手に言われると、尚更ダメージが大きい。
「赤点だな。苗字だけじゃ30点ってところか」
 調子に乗って偉そうに言う上倉先生。けれど、この人がその苗字すら覚えていなかった事を忘れてはならない。
「先生にだけは言われる筋合いはありません。先生なんて0点なんですから」
「何を言う。顔くらいは覚えてたぞ。10点くらいは貰えるはずだ」
 それすら怪しいと私は思っていた。新入部員の存在自体、覚えていたか疑わしい。
「そんなこと、自慢しないでください!」
 勢いよく返した私だったが、そこで佐々木君が控えめに割って入った。
「もういいですから。聞いてるだけで、なんか落ち込んでくるし……」
 気勢を殺がれて、私たちは押し黙った。同時に申し訳ない気持ちで一杯になる。
 ついいつもの調子で先生とやりあってしまったが、改めて考えてみるまでもなく、まず最初に彼に謝罪するべきところだ。今更とはいえ謝ろうと考えた私はしかし、もう触れて欲しく無さそうにしている彼の様子を見て止めた。
 痛み分け――そんな決着に見えて、実のところ痛いのは佐々木君だけだった。
 また何をやっているんだか、私は。先生が絡むと、どうにもペースが乱されていけない。
「それで、ご注文は?」
 なんとか気を取り直し、私は営業スマイルを取り繕って言った。
「ブレンドコーヒー二つで。何だか気分的に奢ってやろう、佐々木君」
 あれで少しは気にしていたらしい。――本当は私が奢ろうかと考えていたのだけど、ここは先生に任せることにしよう。
「不思議とお礼を言う気にはならないんですが」
 何となく不満そうにしている佐々木君。しかし、それもそう長続きはしないだろう。
 こういった感情を逸らすことだけは、この人は本当に上手いのだ。いつも怒気を逸らされ、はぐらかされ続けてきた私が言うのだから間違いない。
 加えて、父の淹れたコーヒーが出てくるのだから、心配するだけ無駄というものだ。
「礼儀は大事だぞ。お世話になったらしっかりとだな」
「先生はちゃんと部員の世話をする顧問になってから言ってください」
 口を出すつもりは無かったのに、ついつい突っ込みを入れてしまう私なのだった。

 あれからすぐ、コーヒーを一杯飲んで、大いに満足して機嫌も直った佐々木君はアッサリと帰っていった。
 それから更に時間は経過し、まだ混み始めるまでには余裕があったが、これ以上、コーヒー一杯で粘られてはたまらない。
 父に無言で促されたのもあり、私は先生の座るテーブルへ向かった。
「お客様~」
「……何か用か?」
「いえ、そろそろ何か追加したくなる頃かと思いまして」
「間に合ってる」
 笑顔のまま、無言で立ち尽くす私。
 ――2~3分程だろうか。黙ったまま見つめる私に、先生は遂に観念して言った。
「仕方ない。サンドイッチでも頼むか」
「種類も色々とございますが?」
「一番安いのでいい。その代わり二つな。あとコーヒー二杯」
 一人なのに、二人分の注文。――意味するところは、一つしかないだろう。
 今日のお昼は急いで少し食べただけだったし、今なら軽食を注文される時間帯でもないので、母に任せて休憩しても構わない。しかし、
「お客様。当店では、そういったサービスは提供しておりませんが」
 私はにこやかに言った。
「サービスするのはこっちだぞ。まあ、要らないなら無理にとは言わない。家で食うから包んでくれ」
「うちはファーストフードではないんですけど」
「お持ち帰り禁止か?」
「――いえ、単純に用意が無いんですよ」
「それじゃ仕方ないな。二人分食うか」
 そういう言い方をすれば私が断れない性格だという事は、この人ならよく知っているはずだ。だからこそ、普段はこんな回りくどい言い方はしないはず。
 今回に限って、どうしてこうも執拗に促すのか。正直に言えば、少し興味もある。
 しばらく逡巡した後、私は言った。
「それでは、カツサンド一つとコーヒー二つ、でよろしいですね」
「いや。なんか違う気が」
「何だかあとが怖いので、コーヒーだけ頂きます。そのかわり、一番高いサンドイッチということで」
 先生は少しだけ考えてから頷いた。
「まあいいか。それで頼む」
 言って、先生は僅かに残っていたカップを一気に空ける。
 私はそのカップを持って、厨房まで下がった。

 コーヒー二杯、カツサンド、それに自分用のタマゴサンドをテーブルに置いて、先生の向かいに座る。
 ちなみに服装はそのままだけど、エプロンとヘッドドレスだけは外してあった。この辺の礼儀は、いい加減に見える父もうるさかったりする。
 ――私はコーヒーを一口飲んでから言った。
「で、何ですか話って」
「ん? そんなこと言ったっけか?」
「回りくどい言い方で席に着かせておいて、何も無しですか」
 呆れて嘆息しつつも、想定の範囲内ではあった。この人は時々、思いつきでこんな風に適当な行動をとる。
 画家らしい感性に従って生きている、のだとしたらまだ許せるのだけど。考え無しなだけな気がしてならない。
 或いは、本当に真面目な話をしようとしていて、思いなおして止めた可能性も無くは無いけれど、
「単に部長と楽しい一時を、と思っただけさ」
 こう言われて、こちらから真面目な話を切り出すのは難しい。
「はいはいそーですか。ありがとーございます。優しい顧問を持って、私は幸せ者ですね」
 いずれにしろ、私が気にしても仕方が無いだろう。そう思い、適当にあしらいつつサンドイッチを一口食べた。
 うん、やっぱりお母さんの料理は美味しい。正直ちょっと羨ましかった。自分も、こんな風に作れればいいのに。
「それにしても、私の両親と随分打ち解けてるみたいですけど。私が居ない時に、変な話はしてないですよね?」
「ああ、その点は心配するな。学校の事は何も話してないよ」
 以前から、一度は釘を刺しておかなければと思っていたのだが、先生は適当に見えて『する』約束は忘れても『しない』という義理はちゃんと果たす人だ。私も言うほど心配はしていなかった。
「俺はあくまで、看板娘にちょっかい出されて迷惑している客に過ぎない」
「――誰がどう見ても逆だと思いますよ。というか、もし事実がそうでも父は逆だと言いますね」
「ああ、あれは困ったな。そう簡単に娘はやらんぞ、と何回言われたか。十回までは数えたが、もうとっくに諦めた」
 軽くモノマネしながら言う先生は、意外なほど父によく似ていた。――顔や声は全く似ていないけれど、人間性には似た部分が多数ある。印象が重なるのは、そのせいなのかも知れない。
「まったくもう……。すみません、今度よく言って聞かせますから」
 先生に限らず、常連さんにはよくそんな話をしている。父にとってはお気に入りのネタで、何度言ってもやめてくれない。本当に困ったものだ。
 しかし、先生は特に迷惑そうにはしていなかった。逆に楽しげにさえ見える。その調子のまま、彼は言った。
「いやいや、あれはあれで悪くない。――楽しいついでに、お袋さんは逆に貰ってくれとか言ってくれるしな」
「……は? え、なんで?」
 そんな光景は見た事が無い。可愛い娘でしょう、なんていうのは日常茶飯事だけど。
「娘というものは父親に恋するもんで、俺が親父さんにそっくりなんだとさ。自分には残念ながら旦那が居るから、変わりに娘をどうぞ、とかなんとか。
 一人でやっていけるタイプだが、どこか危なっかしくて放っておけない。一つの事には秀でるが、他はてんで駄目人間。――どこが似てるんだか理解に苦しむ」
 難しい顔で自覚の無さ過ぎることを言っている先生だったが、私は最後まで聞いていなかった。
 顔を真っ赤にして店の奥に突撃した私は、置き去りにされた先生がどんな顔をしているかまで気が回らない。
「お母さん!」
 厨房に入るとすぐに勢いよく呼びかけた私に、食器を洗っていた母は驚いて振り向いた。
「どうしたの、そんなに慌てて」
「お客さんになんて話をするの!」
 興奮して話にならない私を、母はまず宥めようとする。殊更に静かな声で、落ち着くようにと繰り返した。
「ちゃんと話してくれないと、何も分からないじゃないの」
「だから、えっと――」
 そうして少しは落ち着いた私は、先生から聞いた話を簡単に説明する。
 しかし母は覚えが無いようで、しきりに首を傾げていた。
「言った覚えは無いわねぇ。何かの間違いじゃないかしら」
「……ほんとうに?」
「私の記憶に間違いが無ければ」
 母は自信を持って言った。
 これが父や上倉先生なら、忘れているだけだとも疑える。しかし、10や20の注文はメモも取らずに暗記してのける、店を影で支える大黒柱が相手である。そんな無意味な嫌疑は必要無かった。
 疑うべき相手は他に居る。
「ごめん、間違いだったみたい」
 私は踵を返し、店内に戻った。そのまま走る一歩手前の速度で、上倉先生の座る席まで突進する。
「やあ、思ったより早かったな」
 無駄に優雅な仕草でコーヒーを味わう先生の姿を見ると、ますます心が沸騰するのを自覚する。
「……言いたい事は、それだけですか」
 私が怒りに震えながら言うと、それでも先生は涼しい顔のままだった。
「悪いとは思ったが、思いついたらどうしてもな」
 やっと満足げな笑みを浮かべながら、先生は言った。
「ちなみに、お前に以前言われたことを参考にしてみた」
「なんでそう、どうでもいい事ばかり覚えてるんですか!」
 最近、お店で会うと先生にペースを乱されっぱなしな気がする。ここは私の、文字通りホームなはずなのに。
「何だか気が楽なんだよな。ここで会うと、心なしか部長の対応も柔らかいし、間違ってもイーゼルなんて出てこない」
 ――ああ、なるほど。要するに遠慮していた訳ですか、私は。
「確かにイーゼルボンバーとかは有り得ませんねぇ」
 言いながら――私の手には何時の間にかトレイがあった。
「でも、メイドにもこんな武器になりそうなものが有るんですよ」
「笑顔が怖い――というかメイド言うな、じゃ無かったのか!?」
「だって、ウェイトレスがお客様を殴るなんて有り得ないじゃないですか」
「メイドはいいのか!?」
 もちろん、こうなったら抗議の声などに耳を貸すわけもなく。
 景気のいい打撃音が響いたその時こそ、我が愛する『やどりぎ』が上倉先生にとって安息の地でなくなった瞬間だった。
 ――美術部部長私的奥義・トレイボンバーの完成である。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/05/18(金) 03:20:38|
  2. 第四話

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