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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

THE FAN~中編~(FORTUNE ARTERIAL 桐葉SS)

 ――――ANOTHER VIEW 千堂瑛里華――――

「この学校に入るまで人付き合いなんて殆ど無かったから、当時は自分が人目を引く容姿をしているだなんて思わなかったのよね」
 支倉君のわざとらしい話題転換に付き合いながら、私は昔の事を思い出す。
 あの頃は全てにおいてお粗末だった。運動は当然問題無いものの学力は入学ギリギリ、対人関係に至ってはよちよち歩きの幼児とどっこいどっこい。
 そんな私が去年一年間にどれほど膨大な労力を注ぎ、今の自分を築き上げたか。誰かに話そうという気は無いけれど、それはちょっとした物語だ。
 私は吸血鬼で、常人とは比較にならない体力を持っている。それをもって尚の限界、大きな山に挑もうかというほど勉強に明け暮れた日々。
 受験勉強も合わせると丸二年続いたその期間が、私にとって一生分の勉強であり、それだけでほぼゼロの学力が進学校の学年トップになるのだから、我ながら凄いと思う。
「それじゃ、ファンクラブが出来たのは不手際だったのか?」
「そう。自分を知らない、人付き合いの何たるかも知らない。そんな状況でね、ファンクラブを作らせてくださいって言われたの。よく分からないけど、ともかく面倒そうだとは思ったから、無理な条件を付けてお帰り願ったわ」
「どんな条件だったの?」
 興味を惹かれたのか、紅瀬さんも話に入ってくる。
「100人くらい集まったらね、って言ったんだけど。結果は言うまでも無いわね」
 私は当時を思い出してげんなりした。支倉君は微妙な顔をしているが、こんな時の紅瀬さんは無表情で通すので、その考えを窺い知る事は出来ない。まあ考えるまでも無く呆れているんだろうけど。私にも、その100名超の生徒達にも。
 ――ただし、彼等が呆れているのは私がそれほど魅力的な女性だという意味ではなく、あの兄が同じ学内に居るのにその条件を出した事に対してであろう。今なら私も同様に呆れる。
「その結果が、月に一度の写真撮影ね」
「なっ……けほっ、こほっ!?」
 紅瀬さんの言葉に驚き、咽てしまった。
 無理矢理に落ち着かせてから反論する。
「どうして知ってるのよっ!?」
「本当だったの?」
 紅瀬さんが驚きに目を見開いている。――やられた。
「また兄さんね。もう、すぐに余計なことを……」
「冗談半分、という口調だったから。貴方が墓穴を掘らなければ確定することは無かったわ」
「なんだか、遊ばれた気がして余計に腹立たしいわね」
「実際にその通りだと思うぞ」
 支倉君の意見は正しい。後で一発、盛大な花火を打ち上げようと心に誓う。
「そんな訳で、月に一枚写真を撮って配るなんて話にもなったの。まあ、そんな事で学院生活を楽しめるなら――とも思うし。ちょっと複雑だけどね。私なんかに注目してないで恋人でも作って欲しい、というのが本音」
「で、人の良い瑛里華会長はあまりに楽しそうな彼らを見ていて強く言えない訳だ」
「……そりゃね、変な事をしたり言ったりすれば解散させるわよ。ああいう団体の世間的なイメージが分からないけど、とにかく紳士的というか、何というか……」
 彼らは自己満足を最低限に抑え、私の役に立ちたいと考える集団――なのだそうだ。私に好意を寄せる能力劣化版支倉君といった感じ。
 何しろ本気で正義感の固まりな彼らは、裏の警察組織みたいになって学院の治安維持にまで貢献中である。その手の怪しい団体は見つけてくるし、盗撮写真(幸いにもワイセツなものは見つかっていないが)を犯人セットで見つけてくるし。
 こういった連中の処分は、当時から目立っていた悠木先輩にお世話になった。例のシール、10枚セットでプレゼントすると再犯率が今のところ殆どゼロである。当時は『風紀』じゃなくて『○○愛』と色々物騒な単語が書かれていたっけ。
 例外は不本意ながら我が兄くらいだ。シスターの私服姿という超レア写真をゲットしていた事件は、シールを20枚セットで送られた上に直接シスターからお説教のおまけ付きという厳罰に処された。それでも悪びれた様子は微塵も無く、今も顔をあわせる度にシスターを口説いているのだから他人のフリ位はしたくもなる。入学当初ならともかく、今更試みても後の祭りだが。
「ともかく、私がほんの少し我慢するだけで色々と上手くいくの。自分で言った事でもあるし、今更引っ込みつかないわ」
 二人はどうにも納得いかなそうな顔をしているが、この件をこれ以上話すつもりは無い。
「それより、紅瀬さんにもファンクラブが生まれたって聞いたけど」
 私は話題を紅瀬さんに向けて誤魔化すことにしたのだが、当の本人は不思議そうに首を傾げている。
「聞いた事が無いわね」
「なら非公認ってこと。少なくとも、今のところはね」
「永遠に認めないだろ」
「もちろん、支倉君はそう願うわよね」
「当たり前だ」
 即答だった。私は満足して笑顔を作る。
「うん、合格合格♪」
「なんなんだ、それ」
「何でも。……あ、そうだ。私も入ってみようかしらね。紅瀬さんのファンクラブ」
「そう」
 思いつきで言ってみたのだが、彼女の反応は冷たい。自分は無関係を貫くつもりらしい。
「つれないわねぇ。怒っても泣いてもいいから、せめてもう少し反応が欲しいわ」
「唐突過ぎるし、女同士だろ。そもそも、いつから桐葉のファンになったんだよ?」
「あら、私のファンクラブにも女の子は少なく無いのよ」
 団体の活動が健全なのは、それも起因しているらしい。
「それに、私は一年の頃から紅瀬さんの事が大好きだもの。問題無いでしょう?」
「桐葉はどうなんだ? 瑛里華会長のこと、好きか? 嫌いか?」
 彼自身も気になっているのか、意外なほど真剣に尋ねている。
「……そろそろ仕事を始めましょう」
 紅瀬さんはそう言って、一人で作業を始めてしまった。それからは一切無言。
 そのまま彼女はしばらく黙々と作業を続けていたものの、さすがに数分も二人がかりで見つめられては集中出来なかったのか、唐突に手を止めて顔を上げた。
「どっちでもいいわ、そんなの」
 彼女が答えを求められて『否』とハッキリ言わない意味は十分に理解している。
 私は自然と頬が緩むのを自覚しながら、自分も仕事に取り掛かった。

 ――――ANOTHER VIEW END――――





「私の事はともかく、存在自体はやっぱり嫌?」
「物好きだとは思うけど、それ以上は特別何とも。相手をせずに放っておけば、そのうち飽きて消えるでしょう」
 素っ気無く答えながらも、桐葉は大量の資料を仕分けしている。
 文字通りの山を切り崩す作業だが、そのスピードは俺がやるより何倍も早い。下手に手出しすると効率を下げそうなくらいだ。
 東儀征一郎というスーパーコンピューターを失った生徒会にとって、この少人数で役割を果たすには彼女の存在が欠かせない。生徒会入りしてくれなかった時の事を想像する度にゾッとする。その時は、間違いなく生徒会の評価は去年に比べて大幅に落ちていたことだろう。
「紅瀬さんのファンクラブはね、どうも文化祭のアレが原因らしいの」
「そう」
 瑛里華会長も状況は桐葉と似たようなもので、凄まじいスピードで書類に判子を押しまくっている。
 タンタンタン――なんてタイプライターを打つ様な緩いテンポではない。ドドドドド、と道路工事紛いの擬音が相応しい騒音染みた音が監督生室内で反響しているのだった。
 一般人の目が無いからといって、人知を超えたスピードはどうかと思う。桐葉に張り合うのも結構だが、かなでさんみたいに神出鬼没な人も居るのだから普段から気をつけて欲しいものだ。
 まあ、その基地外染みた超感覚で周囲の気配も探りながらやっているから大丈夫、との事だが。勝負染みた二人のペースを見ていると、それを本当に忘れていないかハラハラする。
 その意味で、雑談を織り交ぜながらの作業となると落ち着いて見えるので、こちらも多少は安心だった。
「あの鋭利な刃物で切りつけるような台詞。どう考えても震え上がるはずなんだけど……。実際に私がやっても怖がられただけなのよね。どうしてかしら」
「普通の人間ならストレスだけで死にかねないぞ」
 たまには俺もツッコミ入れてみたり。しかし、それを知っている俺もよくまあ生きているもんだ。
「実際に無事だったんだからいいじゃない。ちなみに、紅瀬さんファンクラブの情報源は兄さんよ」
「……でしょうね」
 膨大な仕事を進めつつ雑談もこなす二人の間で、俺は先ほど遅れて姿を見せた白ちゃんと共に、たまに言いつけられる雑用をこなすばかりだった。平役員の白ちゃんはともかく、俺なんて副会長の肩書きが恥ずかしくなる。
 もっとも、それほど難しい判断を必要としない単純な書類処理は基本的に担当を外されているのが理由であり、楽なのは今の時期だけなのだが。実際に一人でこなせるのだから纏めて頭に入っている方が何かあった時に便利だ、というのが桐葉の言い分である。実際にはどう見ても仕事の速さで勝負しているのは明白なのだが、深くツッコミを入れると火傷しそうなので、白ちゃんと共に観戦を決め込むのが通例である。
「あの人、何故か私のファンクラブにまで所属しているし。まったく、何が楽しいんだか……」
 物凄い勢いで書類を処理しながら、二人とも縁側で日向ぼっこでもしているように穏やかな声で話していた。
 脳味噌は二つある、なんて言われても丸っ切り意味が間違っているし、なんかもう化け物かと疑いたくもなる。いや実際そう言えなくも無いんだが。
「孝平、これとこれとこれを――」
「あ、支倉君。これコピーおねが――」
 二人が同時に言って、全ての動作をピタリと止めた。会話も唐突にストップしている。
 その膠着状態は数秒も続き、静寂を切り裂いたのは瑛里華会長の声だった。
「……じゃあ白。紅瀬さんの方をお願い」
「は、はいっ!」
 瑛里華会長に言われて、慌てて桐葉に駆け寄る白ちゃん。しかし、桐葉はそれを遮った。
「私の方が0.23秒ほど早かったわ」
「気のせいよ」
「私達の感覚なら、あれだけの差を気のせいで済ませるのは無理があるわね」
「あらそう。私、人間らしくしてたから気付かなかったわ」
 桐葉は無言で瑛里華会長の机を見る。そこには異常な速度で処理された書類の山。人間? どの口がそれを言うのか。
 俺もそう思うのだが、分かっているはずの瑛里華会長はまだ笑顔のままだった。桐葉は疲れたように溜息を一つ吐いてから、俺の方を見る。
「……孝平。これ、お願い」
「あ、ああ」
「ちょっとっ!」
 無視して書類を渡す桐葉に激昂する瑛里華会長。俺は桐葉の差し出した書類を反射的に受け取り、そのせいで思いっきり巻き込まれた事に気付いた。
「順番で構わないわ。どちらもやれば良いし、好きな方からすればいいでしょう」
 それだけ言って、仕事を再開する。瑛里華会長はまだプンスカしているが、もう桐葉は聞く耳持たないようだ。
 しかしそれは態度として無視しているだけであって、俺が瑛里華会長の仕事を先にやったらきっと後でしっかり怒るのだろう。当然ながら逆もご同様である。さて、どうしたものか。
「あ、あの、瑛里華先輩。私じゃ駄目ですか……?」
 その時、泣きそうな顔で白ちゃんが割って入った。
「そ、そうね。それじゃ白、こっちをお願い」
 東儀先輩にくれぐれもと任されている瑛里華会長だから、それを断る事など出来るはずも無い。
 こんな時こそ、白ちゃんは人間関係の潤滑油として欠かせない、と改めて思う。ならば俺はどうなのだろうか。
 円滑な人間関係を構築するどころか、桐葉と瑛里華会長が喧嘩する原因の2割くらいは俺な気がしないでもない。いや、本人達はそれもコミュニケーションの一環として楽しんでいる節があるので、マイナスとも言いきれないのだが――。
「孝平」
「ん?」
「早く」
 桐葉が顔も向けずに催促してくる。
 やれやれ。まあ仕方ない。
 他にやる事が無いなら雑用だけでも頂点を極めてみせよう、と俺は心に誓うのだった。





 ――――ANOTHER VIEW 紅瀬桐葉――――

 仕事が始まってからの衝突は一回だけで、その後は静かに時が過ぎていく。
 あれくらいは普段通りなので、特別気にする程でもない。毎回新鮮な反応を見せる東儀さんは、逆に大したものだと思う。
「ところで、さっきの話だけど」
 しばらく黙っていた千堂さんが言った。
「どの話かしら」
 視線を上げずに声だけで答える。見てはいないが、恐らく彼女も同じだろう。
「ファンクラブの話よ。迷惑なのか、それとも嬉しいのか」
「どうでもいいわ。さっきも答えたはずよ」
「それは私をどう思うか、という質問だったと思うけど」
 そうだったか。どうでもいいからか、記憶が薄い。
「私より、貴方はどうなの? 嫌がって欲しい?」
 少しは興味がある方へ、という訳で孝平に話を振ってみた。気紛れ半分、嬉しい答えを期待するのも半分。
 彼は真面目に考え込み、私も千堂さんも一時手を止めてその様子を見守った。東儀さんも一緒になって注目している。
 やがて彼は顔を上げると、自分でもよく分からなそうな顔をして言った。
「少なくとも、喜ばれれば複雑な気持ちにはなるな」
 概ね期待通りではあるのだが、どうにも物足りない。更にもう一押ししてみることにする。
「私が頼んだら、解散させてくれるのかしら?」
「難しいわよ~、特に支倉君がやるというのは。ただでさえ独占していて恨まれてるかも。もし解散しろだなんて言ったら……」
「夜道が怖いわね」
 空気を読んで乗ってきた千堂さんに、私も調子を合わせる。こういう時だけは息が合うというか、彼女はそもそも察しの良い人だ。ただ分かり安すぎるから遊ばれるだけで。
 その点でも孝平はずっと上なのだが、同時に人の良さも上なので、躊躇いも無く損を丸被りする台詞を言えてしまう。
「それでもやれって言われたら、まあ頑張ってみるさ」
「本気?」
 千堂さんが確認すると、孝平は迷い無く頷いた。
「本人が嫌がっているなら、やっぱり駄目なんじゃないかと思う。誰が誰を好きだとかは自由だとしても、徒党を組むと気が大きくなるし、変な輩も出てくるかも知れないからな」
 孝平は真摯な言葉で答えてくれた。私も胸が熱くなる思いだ。彼は、ちゃんと私の事を考えてくれている――。
 そんな私の感動に水を差す金虎が一匹、面白がるように笑顔だった。野次馬根性丸出しだ。普段はどれだけしっかり者を装っていても、所詮は恋話の奴隷――つまり普通の女の子ということか。
「なんともまあ、凄いわね。そうと分かってはいたつもりだったけど」
「何が言いたいの?」
「ただ羨ましいと思っただけよ。ごちそうさま♪」
 からかう様な笑顔が、幸せそうなそれに変わる。邪気が綺麗に無くなった笑顔に、私は皮肉の一つも返すつもりが何も言えなくなってしまった。
「それで、実際にはどうするの?」
「……だから、どうでもいいと言ったでしょう」
 照れ隠しでもないが、何となく言葉がつっけんどんになってしまう。
「そう。じゃあこの話はおしまいね」
 急に冷めた口調でそう言って、彼女はアッサリと話題を捨ててしまう。
 しばらく沈黙が続き、
「でも……」
 耐え切れなくなった私は、何を言いたいかも考えずに言葉を発していた。

 ――――ANOTHER VIEW END――――





「誰かさんがどうしてもと言うなら、止めないわ」
 桐葉はそう言って俺の方を見た。
「ですってよ」 
 瑛里華会長まで俺に期待するような笑顔を向ける。
「マジデスカ」
「骨は拾ってあげるわね」
 瑛里華会長がからかうように言い、
「それは寂しいわ。でも大丈夫、夜道では私が守ってあげるから」
 桐葉の真剣そのものの言葉に、俺はガックリと項垂れた。
「なんか逆だろ、それ……」
 しかし、実際にはそういう力関係だったりするので、明確に反論も出来ないのであった。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





後編へ続く
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/01/13(木) 00:37:08|
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