FC2ブログ

竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

Chapter EX-3

 たまの日曜、天気は快晴。教頭の無意味な演説も無い、開放的な朝。目覚めてしまえば、家でゴロゴロしているのも勿体無い気がしてくる。
 そんなわけで、俺は目的地も無く町をブラブラと彷徨っていた。
 ちなみに、家には分かりやすく500円玉を一枚置いてきている。昨今のデフレの影響もあり、ワンコインで十分な食事にありつけるはずである。それ以上のものが食いたければ、自分で足せば良いだけの話。いつもと違い、休日なりの優しい起こし方をしてやったら無反応だったエリスには、今日のところはこれで我慢してもらうしかない。
 まあ起こしたといっても、起きてもらおうという気は、正直なところかなり薄かった。妹分のエリスは、客観的に見ても可愛いとは思う。懐いてくるのも、実のところ悪い気はしない。しかしながら、四六時中ベタベタされては、たまには開放されたくなる。正しい休日の過ごし方、ってやつを実戦してみたくもなるのである。
 たとえば、一日中ゴロゴロしていて、いつの間にか夜になっていたり。散歩中に公園のベンチで休んでいたら、いつの間にか眠り込んでいたり。ファミレスでドリンクバーだけで数時間も粘り、読書をしていたらいつの間にか居眠りしていたり。
 ――いや、別に寝たいわけではないんだが。それでも思い浮かぶ休日の行動ってやつは、最後には寝てしまうものが何故だがやけに多い。筋金入りだな、この駄目人間ぶりは最早どうしようもない。
 そこで思い出したのは、眼鏡をかけて堅物然とした少女だった。俺が顧問を務める美術部で部長を務めるアイツは、もしこんな怠惰な俺を見つけたら、また高説を披露してくれるだろう。教頭の朝礼とどっこいどっこいの濃いやつを。
 エリスどころではなく、この休日を楽しむために出会ってはいけない人物ナンバーワンだ。自分の考えに何となく薄ら寒いものを覚え、俺は周囲を見回した。
 無目的に歩いていた俺は、いつの間にか商店街の入り口に差し掛かっている自分に気づく。そして、そこは突如出現した異世界に支配されていた。
 恐ろしく顔立ちの整ったメイドさんが、大荷物を抱えてフラフラと歩いている。その危なっかしい様子に、誰も手を貸すどころか、ただただ呆気に取られていた。
 俺は見惚れていたわけではないが、不思議な何かを感じて、しばらく彼女に目を奪われる。すると、偶然にもメイドさんと目が合った。彼女は驚いたようにこちらを見つめ、動きを止める。
「やあ」
 なんとなく挨拶などしてみたが、彼女は答えない。驚いたように身を竦ませると、すぐに目を逸らして小走りで立ち去ってしまった。
「何だったんだあれは。最近どこかで見たような気も……いや」
 すぐに思いなおした。幼馴染にはよく朴念仁と呼ばれはするが、さすがにあんな美人を忘れる訳がない。
 どこかで会いましたか、などと古臭いナンパの真似事をせずにすんだ事にホッとしつつ、俺は散歩の続きを再開した。

「ぶぇっくしょいっ!!」
 自分のクシャミに驚いて目を覚ます。気恥ずかしくて周りを見回すが、人影が見えるのはかなり遠くで、こちらを気にする様子も無い。
 撫子学園からも遠くない、細長い湖を取り巻く木々と散歩道からなる名も無い自然公園。古びた木製のベンチに腰掛け、俺は居眠りをしていたらしい。
 ウトウトする前の記憶を辿る。確か、適当に昼食を済ませた後は公園を散歩していたはずだ。食後の気だるさから眠くなったのだろう。
 いくら気温が高い、日差しが強いと言っても、冬の日々の中では、という但し書きが付く。水面を渡ってくる風が頬を撫でると、肌が千切れそうなほど冷たかった。いくら厚着をし過ぎて暑苦しいとはいえ、風邪を引いても不思議は無い。
 寝起きで体温が下がっているのか、いつの間にか肌寒さを感じるようになっていた。空腹感はまるで無いが、何か暖かい飲み物だけでも腹に入れておきたい。
 本格的な喫茶店でもあればと思うが、生憎そんな都合のいいものは、少なくとも近くには無かったはずだ。あまり移動に時間をかけると、余計に体が冷える。
「ファミレスでいいか」
 わずかな逡巡の後、俺はそう決めて立ち上がり、歩き出した。
 来た道を戻るのではなく、近くの出入り口を目指す。気分転換にこの公園に来ることは今までにもあったが、半端な場所から外に出るのは初めてのことだ。
 公園から出てすぐ、俺は意外なものを発見する。
「なんだ。あるじゃないか」
 今まで気付かなかったのが不思議だが、公園からファミレスのある駅前へ直接出ようとするのは初めてだ。木々の陰になって埋もれると、一体となって目に付きにくい店構えも手伝って、特に不思議な事とも思えない。
 店先には『自家焙煎珈琲』と書かれた看板がぶら下がっている。
「喫茶店やどりぎ、か。本格的な感じだな」
 壁に古木を使い、ややくたびれた感じに見せている外装は、狙っての事なのだろう。縁側で茶を嗜む老人のような風情がある。
 よほど空気の読めない者でもなければ、騒がしい人間はそもそも入ろうとは思わない雰囲気。これで厳しい面の頑固親父が淹れる、美味いコーヒーが出てくれば完璧だ。
「落ち着けて、温まれれば十分だけどな」
 店の質よりも、近くに店があったことにこそ感謝しながら。しばらく店構えを観察していた俺は、ようやく店の中へ入った。






























Chapter 3-1へ
目次へ戻る


テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/03/01(木) 18:45:25|
  2. 第三話

メニュー

無料レンタルサーバー

まったり空間
↑↓気軽に押してね♪

FC2Blog Ranking

プロフィール

 管理者:マク
 ご意見・ご要望・ご感想・リンク希望等は拍手か以下のメールフォームにお願いします。

 また、投稿作品を掲載して欲しいという場合にも、こちらのメールフォームにて受け付けます。投稿作品の感想は、各作品のコメント欄を開放しているので、そちらで受け付けます。

名前:
メール:
件名:
本文:

 拍手で長文を送りたい場合はこちらでも可。
 設定で無しに出来ないためこうなっていますが、メールアドレスが描きたくない場合は以下のアドレスを入力して送ってください。
 仮入力アドレス:teki@tou.de

カテゴリー

FC2投票

攻略するとSSが生まれるかも知れない。

無料アクセス解析

二次創作サイト更新情報



リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSリンクの表示