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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

半泣きツリ目系(オリジナル) 第二話

 私たちは、同じ保育園で育った。
 何だか変わった園で、クラスも年齢ごった煮の全員一括管理。小さな子の面倒を大きな子が見る事で自立心を養う、という方針だった。
 当然ながら毎年違う年の子が入ってきては、頼りにしていた上の子が居なくなる。上の子が卒園する時、下の子はそうして泣きながらサヨナラをするのだ。
 しかし、私たちだけは立場が綺麗に逆だった。
「たっくん……やだよぅ……うぅ……ぐすっ」
 泣いていたのは年上で卒園する私。それを宥めているのは、年下で園に残るたっくんだった。
 彼だって、きっと本当は泣きたかったはず。何しろ小さいという意味では少しだけ彼の方が年下で、相応に精神も幼かったのだから。
 それでも彼は耐えた。私がもっと泣くのが分かっていたから。
「こーこ、なくなよ」
「だって、だってぇ……」
 私たちは一つ違い。でも、それは学年での話。
 4月2日生まれのたっくんと、4月1日生まれの私は、ほぼ生まれた頃から一緒に育った。本当の姉弟よりも長く、双子よりは少しだけ短い付き合い。
 お互いの両親がやっと見つけた保育園で、園児としても一緒に居られた。
 だから、引き離されるのは生まれて初めて。一日の殆どが一緒に居られなくなる。想像もつかない事態に、私は目の前が真っ暗になる思いだった。
「ひとりだとおもうから、なくんだ」
「だって、ひとりだもん」
「ほかのともだちもいるだろ」
「たっくんが、いないもん」
「じゃあ、これをやるっ!」
 彼は何故かそっぽを向きながら、手に持っていた小さな包みを突き出した。
 まだ泣いていた私も、ぼやける目を必死に擦りながら受けとって、すぐに包みを開ける。
 中から出てきたのは、一本の真っ赤なリボンだった。
「こっ、これやるから、なくなよっ!」
 まだそっぽを向きながら叫ぶ彼に熱い視線を注ぎながら、私の涙は既に意味を変えているのだった。



 そして10年ほど経ったある日。
「可愛くしてれば少しは見られ方も違ってくるだろ」
 たっくんは、そう言って私の誕生日に再び真っ赤なリボンを贈ってくれた。
 彼はきっと覚えていないが、それは私にくれた初めてのプレゼントと、本当によく似ていた。
 翌日、早速そのリボンを身につけて登校した私は、休み時間に廊下を歩いていると突然声をかけられる。
「ちょっといい?」
 振り向くと、学級委員会で顔を合わせる隣のクラスの子だった。それほど親しい間柄ではなく、お互いに顔と名前を知っている程度。
 慣れない相手におどおどしている私を尻目に、彼女はいつでもそうだと思える自然な笑顔で話しかけてくる。
「もしかして、篠座さん?」
「はい」
「本当にそうなんだ。噂には聞いたけど……実際に見てビックリしたわ」
「このリボンですか?」
「ええ。そんな可愛らしい髪型をする人だとは思わなかったから」



Sketches and company(ブタベストさん)


 私は髪を両脇に束ねて、いわゆるツインテールという髪型にまとめている。やはり、普段の私を見慣れた人には違和感があるのだろうか。
「似合いませんか?」
「いいえ。むしろ、今の方が当たり前みたいに似合ってる。だから驚いているの」
「ありがとうございます」
 私は深々と頭を下げた。
「それ、誰かからのプレゼント?」
「幼馴染の子にこの前、誕生日プレゼントとして頂きました」
「仲良しなのね」
 我が事の様に嬉しそうに、彼女は笑う。
 ああ、もうこんなに効果が出た。さすがはたっくんだ。私の頭の様に、勉強にしか使えないのとは違う。
「誕生日、もう過ぎちゃったの?」
「4月1日生まれなんです」
「そうなんだ。ある意味まだとも言えるけど、う~ん。……良かったら、今度あなたの家にお邪魔してもいいかしら。誕生日プレゼント、友達になるには良いきっかけだと思うし」
「え……?」
 いきなりそこまで進展するとは思わず、私は呆然としてしまう。
「もしかして迷惑だった? それなら遠慮せず言ってね。別の手を考えるだけだから」
 気にしないどころか、少しもめげない。結構凄い人だ。でも、この時の私にそこまで考える余裕は無かった。
「そっ、いっ、とんでもなくっ、あの、うれしっ……!?」
 慌てて否定しようとして、自分でも何を言っているのか分からなくなってしまう。そんな私の様子に彼女は意外そうな顔をしたが、それもすぐ親しみの籠った笑顔に変わった。
「本性は意外と可愛いんだ」
「あっ、あぅっ……?!」
 頭を撫でられて、身体が小さく縮こまってしまう。
 私は頭を撫でられた時だけ、条件反射で背中を丸めてしまう癖があった。それは、たっくんの前でしか小さくならないからで、たっくんにしか頭を撫でられたりしないからで――。
「そ、それだけは、駄目なんですからっ!」
 必死に手を除けて後退ると、彼女は呆気にとられていた。
「なるほど、なるほどね。うんうん、つまり私にはその権利は無いと」
 恐ろしく察しの良い人だ。まるでたっくんみたい。
 答えず、頷きもせずに呆然としている私に再び近づいてきて、彼女は手を差し出した。
「改めまして涼海鏡花(すずみ きょうか)と申します。よろしくね」



Sketches and company(ブタベストさん)


「よ、宜しくお願いします。篠座紅子(しのくら こうこ)、です」
 何だか大変な人かも知れない。彼女の押しの強さに、差し出された手を握り返しつつも腰が引ける思いだったが、同時にそれ以上に惹かれるものを感じていた。
 悪い人には見えないし、隣のクラスとはいえまだ不安に思う学級委員会で友人が出来るのは心強い。無言のまま変に長い握手になって、どちらからともなく手を離す頃には不思議と笑顔が転がり落ちる。二人の間に自然な笑みが交わされると、もう親友にでもなった気分だった。
「ところで――ええと、名前でいいかな」
「はい、鏡花さん」
 そういう時は素直に肯定すると決めておけ。その方が気が楽だろ。――コレも、たっくんの教育の賜物だった。
「敬称は有っても無くてもいいけど、私は付けた方が良い?」
「私も、どちらでも」
「じゃあ紅子。最初から気になってたんだけど、左右でリボンの長さが違うのはどうして?」
 訪ねられて、私は無意識にそのリボンに触れる。
 今回、彼に贈られたリボンは二本だった。可愛く、というコンセプトから幼く見える髪型が良いと考えたらしい。そのリボンを見たときに、私はある考えが閃いた。
 小学校に上がった頃。たっくんにもらったリボンは、私が小学二年生に進級し、たっくんが入学してきた時点で大事に仕舞い込んだ。本当に大切な時のおめかしにしか使わなくなった。
 そして今、私はあの時とそっくりな状況に置かれている。彼のリボンだけが頼りのこの一年。二つのリボンを身につけるのなら、片方はあの時のリボンにしてみようと考えたのだった。
 大事にしてあったから、少しだけ色がくすんでいるとはいえパッと見で分かるほどの違いはない。ただ昔貰ったリボンは、彼女の指摘通り確かに少しだけ短い。
「これは、大事な秘密が隠されていると見たわ」
 真実は私の胸の内にのみ。一人でもしっかりして、たっくんを安心させたい。その願掛けで、たっくんにも秘密だ。答えに窮する私を見て、彼女はすぐに退いた。
「今日はこのくらいにしておきましょ。まだ知り合ったばかりだし、ね」
「は、はい。助かります……」
 彼女の勢いに、私はすっかり化けの皮を剥がされてしまった。本当は小さな自分を知られてしまったというのに、何だろうこの清々しさは。彼女の態度が、最初と今とで何も変わらないからだろうか。
「ところで、その幼馴染君とは長いの?」
「えっと、殆ど生まれたときから一緒で……」
「やっぱり男の子なんだ。いいなー」
「え――っ、ええええっ!!?」
「あっはははははは。また委員会でね。あとチャイム鳴ったしそっちも急いだ方が良いわよ~」
 一目散に逃げ出した彼女を追う様に私も早歩きで教室に戻る。
 からかわれた直後だというのに、何故か私の足は軽やかだった。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/05/18(火) 01:39:43|
  2. 半泣きツリ目系

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