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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

ゼロを使い魔  第三話

 ◆◆◆◆◆第3話◆◆◆◆◆





「ところで、それ何なんだ?」
「見た目通りの杖です。魔法の発動を補助したりしてくれます」
「ここのと違って、普段は小さくなったりするのか……。なのはちゃん、もしかしてアレ知ってるかな」
「はい?」
「ほら、魔法少女もので。日曜の朝にやってる」
「もしかして、本格推理サスペンスアニメ『魔法少女なのは?』ですか?」
「そうそう、それそれ!」
「毎週見てますよ。クラスでも人気なんです」
 そんなもんを知っているお兄さんって何さ、などと感じないなのは。単純に、異郷の地で共通の話題を得たことで嬉しくなっていた。
「私、主人公の子にちょっと似てるって言われるんです」
「やっぱりな。俺もそう思ったんだ。もしかして、変身なんて出来ないかな?」
「あ、はい、えと、一応」
「おおっ!」
 才人は興奮気味に立ち上がった。
 この世界で現実を知った。絶望した。それでも一縷の望みとばかり駄目もとで聞いてみたが、まさか本当にそうだとは。この世界に来て、初めて神に感謝する。
「ちょっと見せてくれないか!? いや、やっぱり無理か……」
 変身と言えば、ちょっぴり恥ずかしいお約束がある。小さい子とはいえ――いや、だからこそ余計に犯罪染みている。さすがに自重すべきかと自ら引き下がる才人だったが、なのはは上機嫌で立ち上がった。
「レイジングハート、いくよ?」
<了解>
「セーット、アーップ!」
 なのはがRHを掲げながら叫ぶと、辺りが強烈な光に包まれる。その光の中で服が全て弾け飛び、下着から順番に魔力で編み上げられていくのは純白のバリアジャケット。見た目は派手に過ぎる服でしかないが、実際には対物・対魔共に過剰なほどの防御性能を誇る『魔法の鎧』と称すべきものだ。
 それは才人が期待――もとい心配した光景そのものだったが、目潰しに近い魔力放射はそれを誰の目にも触れさせない。もちろん、それにガッカリなどせず、むしろ才人は大いに興奮していた。
「くぅ~っ! やっと本物の魔法少女に出会えた! やっぱり魔法少女は変身しないとな。こっちの世界には魔法少女が一杯居るのに誰も変身しないからガッカリしたもんだよ」
「誰が魔法少女よ。私たちは魔法使いっ! ――って、それ以前に人がショックで固まってるのに勝手に盛り上がってるんじゃないわよ!」
「お、ルイズ。やっと気がついたか」
 ちなみに二人の会話は、先ほどのRHの発言によって固まってしまったルイズを放置してのものだった。
「こんな大事が軽く流されていいと思ってるの!?」
「ルイズが使い魔の使い魔の使い魔だろうが俺にはどうでもいいことだろ」
「一つ多い! ……第一、あんただって私より更に一個追加になるのよ? いいのっ!?」
「そもそもが使い魔なんだろ? 何個か増えたって似たようなもんだ。大体、俺はお前の使い魔だなんて認めた覚えは――」
「ええ、そうよ。私は認めた覚えなんてないわ!」
「いや、お前じゃなくて俺が――」
 ツッコミを試みる才人だったが、ルイズは全く聞いていなかった。勢いよくなのはの方を振り返り、
「ちょっと、そこの杖!」
<はい?>
「さっきの訂正しなさい!」
<言葉だけなら従っても構いませんが、事実は事実です。そして解除は不可能だと思われます>
「どうして!?」
<異世界の全く違う魔法が複雑に絡まりあい、おかしな結果を生んだ様です。解析に時間がかかり、それでも完全に把握する事は出来ませんでした。少なくとも、私がより人間に近い人格を得たのもその影響だと思われます。本来ならプロテクトがかかる領域まで、今までの蓄積データにより思考パターンが進化したのでしょう。そして、より人間に近い人格になり、人間扱いで契約が結ばれた>
 そのせいでデバイスとしての魔法運用権限にまで影響があったのだが――隠す意図ではなく、マスター以外の二人には理解できない部分なので、マスターへの報告は後回しにする。
 そんな内部での判断はもちろん知る由も無く、ルイズは更に声を荒らげた。
「だから、そもそもなんで私が杖の使い魔なのよ!?」
<さあ?>
「惚けるなぁっ! あの時、あんたが光ってこうなったのは分かってるのよっ!?」
<こちらも敵性生物による攻撃と認識し、必死の抵抗でした。不可抗力かと。そもそも幼い少女を強制召喚して親元から引き離した上に、ろくな情報も与えず騙すような言い方で使い魔契約を結ぼうとしたあなたの失態。いわば自業自得です>
「うぐっ……。こ、この。杖のくせにっ!!!」
<では私もあなたを下僕と呼びましょう。もしくは犬でしょうか? この世界では使い魔をそう呼ぶとあなたを見て理解し――>
 そこで不自然に言葉が途切れた。RHは、唐突に自らが壁に叩きつけられたのを理解する。木製の壁は派手に穴が開き、RHはかなり深くまでめり込んでいた。
 誰の手で? もちろん、そんなものは確認するまでも無い。
「レイジングハート? いい加減にしないと怒るよ?」
 笑顔が怖いマイ・マスター。普段は優しいけれど、この世で最も怒らせてはいけない人だと、RHは誰よりもよく知っている。何しろこの人の説得は全力全壊なのだ。
<イ、イエッサー>
 焦りのあまり、別のデバイスを真似た言葉が自然に漏れた。機械の自分が何故、これほどの恐怖を感じるのか。RHのそんな疑問は、しかし何の意味も無い。
 恐怖は現実も常識も捻じ曲げる。一番身近で、その逆鱗に触れた者達の末路を見てきたからこそ、そんな無意味な奇跡が起こったと無理にでも納得し、適切な対応をするしかない。
「使い魔さんが犬なら、レイジングハートもこれから犬って呼ばれちゃうよ? いいのかな?」
<――自重します。申し訳ありません>
 こんな時、この人はいつも笑顔だ。怒った顔など無く、笑顔に種類があるのだ。逆らってはいけない。もっと怖い笑顔は見たくない。
 RHは自ら宝珠に戻り、マスターのバリアジャケットも解除して、首飾りとしてなのはの胸元に戻った。
「あの、ルイズさん。ごめんなさい。こんなことになって。あとレイジングハートが色々と失礼な事を……」
「いいよ、気にしないで。元はといえばこっちが悪いんだからさ」
 そう言いながらルイズの頭をポンポンと気軽に叩く才人。ルイズはそれを乱暴に振り払った。
「なんであんたが答えるのよ!?」
「今の、お前より俺のほうが馬鹿にされてた気がするんだけどな」
 やれやれ、と疲れたようにため息をつく才人だったが、ルイズの怒りの炎はかなりの時間燃え続け、なかなか鎮火する気配を見せなかった。



 何だかんだで日も暮れて、一つのベッドに三人で寝る事になった。才人、ルイズ、なのは、の順番に川の字になってベッドに入る。
「それでいい?」
「はい。むしろ、誰かと一緒に寝るのは楽しいです」
「そう」
 勝手に二人で話を進める二人を前に、おいおいいいのかこれ――とは思うものの、使い魔の使い魔の使い魔たる才人に発言権などますます無いのだった。
 そんな訳で男性初――フェレットとかもちろん除外――の、なのはと添い寝――間に一人挟んでいるが――を達成した才人であるが、こんな状態で一晩もつ訳が無かった。
「ちょっと才人……。も、もう少しそっち行きなさいよ」
「これ以上行くと落ちるだろ。大体このベッド、一人用としては確かに大きいけど、三人で寝られるほどのサイズでもないんだよ」
「じゃあ床で寝なさいよ」
「もう冷たくしないってこの前言ったばかりだろ!?」
「私だけ見てろって言ったでしょう!?」
 そんなこんなでは眠れる筈も無く。
 何度か寝たり起きたりして、ようやく諦めたなのはは、顔を洗ってくると言って一人部屋を出た。
 そして魔法学院の敷地内にある噴水の縁に腰掛け、ボーっと夜空を見上げる。
 RHの保有する膨大なデータから照合しても、当然ながらこの地の星空に該当するものは見つからない。全く未知の次元世界なのは間違いなかった。
 不安が無いと言えば嘘になる。疲れているのに、寝付けずに外に出たのはそのためでもある。
 もっとも、それ以上に致命的な問題もあったのだが。
「はぁ……。仲が良すぎるのも問題だよね」
<なかなか仲良く見えない仲の良さ、というのも問題です>
「確かに」
 仲裁に入って無駄に痛い思いをして、挙句にただじゃれあってただけです、などと文句を言われた日には報われないにも程がある。
 ルイズと才人もまさしくそれで、要するになのはの居場所など無いのだ。あの部屋には。
「追い出したりはしないんだろうけど。やっぱり、他で見つけないと駄目かなぁ……」
 とは言うものの、今日のところはルイズの部屋に戻るしか無いのだった。





 翌朝。
 規則正しい生活が骨の髄まで染み込んでいるなのはは、寝不足でも定時に起きていた。時間の感覚も地球と変わらず、飛ばされた時間もピッタリだ。不思議な事だが、時差ぼけの類いが無いのは助かる。
「おはよう、レイジングハート」
<おはようございます>
 テーブルの上に置いていたRHを手に取り、挨拶を済ませてから首に掛ける。
 振り返ってベッドを見ると、今や彼女の使い魔と化した二人は、いまだ深い眠りの中にあった。

 なのはが部屋を出て、散歩がてらゆっくりしながら顔を洗って戻ってくると、ルイズは既に起きていた。才人の姿は無い。
「もう支度は出来てるわね。ついて来て」
 ルイズに促されるまま、なのはは食堂に連れて行かれた。朝食らしい。
 なのはの通う私立聖祥大学付属小学校の体育館よりなお広い空間に、ズラリと並んだテーブルと椅子は、それだけでも壮観である。あまりアンティークに詳しい訳ではないが、なのはにもそれらの家具が全て作りの良い高価な物だとは察せられた。
 料理は既に並べられていて、ルイズが先に座る。
「何をしているの? 昨日のうちに話は通してあるし、遠慮する事は無いわ」
「は、はい」
 ルイズに促され、なのははその隣に座った。
「あの。ところで才人さんは……?」
「適当にその辺で済ませてるんでしょう。一緒に食べようって言うのに、何故かいつもこうなのよ。まったくもう……」
「いつも来ないんですか?」
「ええ」
 確かに、何でだろう。美味しそうな料理が並んでいるのに。
<扱いが違うのでは?>
 首を傾げるなのはに、RHが確信めいた声で言った。
「当たり前でしょう、平民なんだから。でも椅子は無くても、ちゃんとお皿は用意してるのに……」
 促されたなのはが見たものは、床に並んだ皿二つ。
「あ、あははは……」
 価値観の違いというものは怖い。これでも好意を寄せているのは間違いないのだから、なのはの歳では笑って誤魔化すぐらいが精々だった。
「でもなのはは良いのよ。普通に座って、普通に食べて。私たちと同じね」
「……えっと、私も貴族とかじゃないんですけど」
「魔法を使えるんだから、扱いも違うわ。学院側が認めたのだから、それでいいのよ」
 才人の事を考えれば気が引ける。とはいえそれが日常ならば、今日のところは仕方が無い。
 何より、見知らぬ環境に放り込まれてからの気疲れと、健康的かつ身体・精神・魔法の全てが成長期真っ盛りのなのはは実にお腹が空いていた。才人の事は、そのうちお話をして今後の状況の改善に努めよう、とだけ心に誓っておく。
 そんな訳で、少々気がかりはありつつも豪華な朝食に舌鼓を打つなのはなのだった。

 食後、学友に紹介だけでもするからと促され、なのははルイズに連れられ中庭に来ていた。
 そこに、金髪の軽薄そうな男が近寄って声を掛けてくる。
「やあ、ゼロな使い魔のルイズ」
「な……っ!?」
 それは秘密のはずなのに。そう続くはずだった言葉を、なのはが慌てて遮った。
「あ、あの、どういう意味ですか? 使い魔は私の方で……」
「キュルケが言っていたのさ。まるで逆みたいに、使い魔の方がしっかり者だってね」
 どうやら約束は守ってくれているらしい。察するに、つい漏らしそうになり慌てて誤魔化したというところか。
 胸を撫で下ろしたのはルイズも同じようで、急に大人しくなる。それを確認して、なのははルイズの口を塞いでいた手を離した。
「で、何か用。それとも、ただ馬鹿にしに来たの?」
「いいや、ただの見物さ。……それにしても、これはまたお似合いの小さな使い魔さんじゃないか」
 言葉は馬鹿にしているのだが、ギーシュの目は値踏みするようなそれだった。
「また平民を召喚したのに、今度は魔法が使えるとか?」
「そ、そうよ。なのはは凄いんだからっ!」
 どの程度の力を持っているのかは分からないが、使い魔契約を反射するくらいだ。多分凄いのだろう、とルイズは胸を張った。
 それを見て、ギーシュは吹き出した。
「はははは。有り得ないね。さすがに学院側が認めたくらいだ、魔法自体は使えるんだろうが……ルイズの使い魔がそんなに凄い訳が無い」
<ならば試してみればいい。決闘といきましょう>
 その言葉に、ギーシュの笑いがピタリと止まる。
 声も、それを発した者も方向からしてなのはしか有り得ない。ただし、それはレイジングハートの作った合成音声である。
 当然ながらなのは本人の口は少しも動いていないのだが、そんな些細な事、自分の認識を都合よく解釈するのが人間だ。問題になどならない。
 なのはから聞こえるなのはの声、当然ながらそれは本人の言葉として認識され、ルイズまで――いや、なのはまで驚いて固まっていた。
<怖いのか。そうだろうな。10歳の、それも平民の少女に魔法戦で敗れる貴族……。そんなもの、プライドも何もあったものではない>
「なっ……き、君ね。言葉を慎みたまえ。今なら謝れば許してもいい。何しろ僕は、名門グラモン家……」
 さすがに小さな女の子が相手である。なんとか自制するギーシュだったが、
<こちらが本気なら5秒とかからず終わる。だが、もう少し遊んでやっても良い。これでもまだ不服か?>
 重ねられた言葉に、遂に忍耐の限界を迎えた。
「いいだろう。君にはどうやら貴族の何たるかを教えてやる必要がありそうだ。午後の授業が終わった後、再びここで待っている」
 言い残し、マントを翻すとギーシュは行ってしまった。
 去っていく金髪の青年を呆然と見送り――そこでやっと、なのはは正気に戻る。
「ちょ、ちょっとレイジングハート!? どういうつもりなの?」
<良い機会です。この世界では魔力素の濃度は正常範囲内ですが、世界からの干渉がどの程度かも検証する必要があります。どうせなら実戦の方が、この世界の魔法とこちらの魔法との相性も知れて都合が良いでしょう>
 RHの悪びれない答えに、ルイズが呆れたようにため息を吐いた。
「つまり、またこの杖が暴走したのね。道具の分際で勝手過ぎよ。廃棄処分にした方がいいんじゃないの?」
<使い魔の分際で口が過ぎます>
「なっ……!」
「とっ、とにかく! ええと、約束は約束で、こちらから言い出した事でもありますし、私の事なら心配しなくても大丈夫ですから」
<それと、情報収集が目的ですから。弱い相手との戦闘は都合が良いでしょう>
「レイジングハート、しばらく黙っててね」
 なのははRHを目の前に吊るしながら、笑顔で言った。しかし、表情が微妙に引きつっている。
「まあ勝てるなら、確かに問題は無いんだけどね……。ギーシュも弱いわけじゃないのよ。もちろんタバサやキュルケに比べれば、かなり劣るんだけど」
<では、彼はこの学院を一人で焼け野原に出来ますか?>
「……へ?」
<出来ないのなら、何一つ問題はありません>
 意味が分からずポカンとしているルイズに、RHは力強く断言した。

























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/01/30(土) 23:48:22|
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