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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

クリスマス・サプライズ(FORTUNE ARTERIAL SS)

 明日を気兼ねなく最愛の人と過ごす為に、支倉孝平は生徒会の仕事を自室にまで持ち込んでいる。
 日が変わればいよいよクリスマス・イヴ。明日の為だからと今晩は顔を合わせずそれぞれの晩を過ごすのは、事前に決めていた約束事。夜を明かす事は稀であっても、その温もりに触れずに過ごす夜はいつ振りだろうか。
 物思いに耽りながら、ふと手を止めて窓を見る。そういえばカーテンを閉め切ったままだ。
 気分転換にベランダへ出てみようかと立ち上がった、丁度その時だった。無人の筈の窓が、コンコンコン、と三度鳴らされる。
 何者、と考えるまでも無かった。ここから進入してくる人間など、一人しか考えられない。
「かなでさん、今日は忙しいので――」
 言いながらカーテンを開け、同時に鍵を開けて窓を開けて、孝平の動きが止まる。
 そこに立っていたのは、背か低くて栗色の短髪を振り乱す、小さいが元気過ぎる先輩――ではなく。
 夜闇に映える漆黒の長髪を纏った、対照的に静けさが売りの美女だった。
 いつも無表情な顔が心なしか不機嫌に見えるのはもちろんだが、何よりサンタらしき服を身につけているのが注目点だ。長い顎鬚も忘れないご丁寧さで稀なる美貌を隠しているくせに、身体にピタリと吸い付くデザインとミニスカートで身体的優位を存分に見せ付ける辺り、何を重視しているのかイマイチ判断しかねる様相である。
「そういや、そうだ。ここから進入してくる人間は一人でも、それ以外では数人居たんだった」
「深く追求する気は無いけれど、少し失礼じゃないかしら」
「ああ、いや、別に眷属だとか吸血鬼だとかが悪いとは言ってないんだけどさ」
 孝平が取り繕うように言葉を重ねる度、どうやら恋人の不機嫌さは更に濃くなっていく。
「……ああっ、いや違うぞ、一目見る前だからな、かなでさんだと思ったのは」
 やっとそこに行き着き、正解となる謝罪を繰り出す孝平。桐葉はツンと澄ましたまま、許そうという気配はまだ見せない。
「恋人なら気配だけで察して欲しいわね」
「無茶言うなよ」
「私は分かるわよ。寝ていても間違わない。絶対に」
 怒っているかと思えば――口説かれているのか?
 不意打ち気味の殺し文句に孝平が言葉を失っていると、桐葉はいつの間にか無表情に戻っていて、ゴソゴソと何かを取り出したかと思うと引き金のように紐を引っ張る。
 ぱんっ、と軽い音がして紙吹雪が舞い散り、頭からそれを被りながら痺れる鼓膜を覆うように手を耳に当てる孝平。それでも、聞き逃しはしない恋人の平坦な声。
「めりーくりすます」
 こういったサプライズは自分がと考えていた孝平は、やられたという思いと共に部屋の時計に視線を走らせる。
 生徒会の仕事に集中しすぎて気付かなかったが、時刻は既に深夜零時過ぎ。
 恋人達の一日が始まっていた。



 その一日を祝福する祝砲が放たれたすぐ後には、孝平は空を飛んでいた。人を超えた存在である恋人の腕に、お姫様のように抱きかかえられて空のデートと洒落込む。
 またもや立場が逆だ、とは思いつつ豊満な女性に抱き上げられるというのも悪くは無かった。
「当日まで何も言わないのは、貴方の事だからサプライズを用意しているのでしょう。それについては楽しみにさせてもらうけれど、されるがままというのも悔しいから。先に私からのプレゼントを受け取って貰うわ」
 そんな事を一方的に告げると、桐葉は有無を言わさず恋人を抱え上げて、窓から文字通り飛び出した。
 人の身では有り得ない、生身で飛翔する感覚。実際には大砲で撃ち出される感覚に近いが、何れにしろ楽しむ余裕などあろうはずも無い。殺人的なGに振り回されながら飛び立ち、滑空し、そして着地する。
 着地はしかし、ふんわりと優しいものだった。
 その次の飛翔は比較的やんわりとしたもので、少しは周りを見る余裕が生まれる。桐葉も一度目の飛翔は加減が分からなかったらしいが、二度目となれば上手く恋人を気遣う事が出来たのだろう。言うまでも無く、飛んでいる最中にはどうしようもない事だ。
 僅かとはいえ余裕の生まれた孝平だが、しかして開いた瞳が捉えるものは風に舞う黒髪と精悍なる美女の淡い表情に限られる。次第に柔らかな感触にも意識が向くと、彼女の視線に促されて前を見れば有り得ぬ絶景に心打たれるのだった。
 どうやら相当な遠回りをして、それでも数分程度の道程。朝、あれほど遠く感じるのが嘘の様に軽々と学び舎に到着すると、緩やかに行われていた着地が一度のみ強い衝撃を生む。
 前方へ向かっていた力が上方へと変換され、二人の身体はグンと力強く重力の束縛を振り解き、一飛びにして校舎の屋上へと着地した。
 速さを見せ付けられてもなお現実味の薄かった彼女の力。しかしサイズを見慣れた校舎をも一飛びにすると、実感としてその凄まじさがよく分かる。
 僅かとはいえ戦慄を覚える恋人を、桐葉はそれこそお姫様を扱う様に優しく足下に下ろした。それから腰が抜けて座り込んだままの恋人に、いつになく不安気な視線を向ける。
「怖かった?」
 いや、と返そうとして孝平は思いとどまる。
 空を飛んだ事は、快感を伴ったとはいえやはり恐怖が勝った。
 それを成し得た力にも、正直恐怖を感じた。
 だが、そのどちらでもない。桐葉が問うのは、自らの存在についてであろう。
「怖かったよ」
 そこまでを理解してから、孝平はあえてその言葉を変えぬまま吐き出した。鈍い男ではない。それは決断の必要な言葉だった。
 対して桐葉はその言葉を受け止め、ふっ――と力を抜き、溜息の様な笑みを浮かべる。孝平の前でだけよく見せる、複雑な表情。しかしそれは、決してマイナスの感情ばかりを表すものではなかった。
「そう」
 付け加えた一言で、桐葉は自らがその言葉を正しく受け止めた事を伝えた。
 言葉で取り繕うのでなく、怖いものは怖いと伝える。それは、その程度で拒絶にならぬと信じられる、別れに繋がらぬと信じられる証。確認の作業。
 二人の関係に不安は無いのだと孝平は言い、桐葉は二人の過去の時間からそれを信じる事が出来た。
 続けていける。それを確認し合うのは、違い過ぎる時を背負った二人にとって、他の男女よりずっと大切な儀式だった。
「綺麗だな……」
 何に対してかも自覚せぬまま、孝平の口からそんな言葉が漏れていた。
 その時、雲に隠れていた月が姿を現す。月明かりに照らされて、桐葉の整いすぎた顔立ちに深い陰影が刻まれた。
 彼女は本当は幻で、月が再び消えたとき、一緒に目の前から居なくなってしまうのではないか。そんな気すらしてしまう程に目の前の少女が美しくて、孝平は感嘆によるものか怖気によるものかも分からぬまま息を呑んだ。
「どうなのかしら、この服。あまりよく分からないのだけど」
「いいんじゃないか」
 孝平は苦笑しながらそう返した。
 自分が綺麗と褒められたのに、何の事だか分からず服だと思い込んで問い返す。そんな惚けたところが現実感を深めてくれて、孝平の不安を否定した。同時にそれは、彼が彼女を惚れぬく一因でもある。
 心底からの褒め言葉であったのは、やはり間違い様の無い事実。それでも鉄面皮で通る250歳ほどの少女は、見た目より更に幼い調子で拗ねたようにそっぽを向いた。本人は冷静なつもり、それを装っているのが余計に可愛い。
「いいのよ、気を使わなくても。こんな可愛い服が私に似合う訳が無いと、最初から分かっていたから」
「美人の桐葉には、可愛い服をこそ着て欲しいもんだけどな」
「そう。なら、着て欲しい服をプレゼントしてくれればいいわ。いくらでも、喜んで着てあげるから」
「それは嬉しい。最高のプレゼントだ」
 こんな可愛いオネダリなら大歓迎だった。実行出来る資金力が有るかどうかは、また別問題だが。バイトするにしても果てしなく精が出る事だろう。
「貴方がどんな変態嗜好の持ち主でも、とりあえず嫌いにはならないから安心して」
「……俺がどんな男だと思ってるんだ?」
 孝平が怖くなって問いただすと、彼女は無言のまま静かに笑った。
 不機嫌な顔こそ冗談であったように、彼女の笑いは実に軽やか。
 あのフリーズドライで通った紅瀬桐葉が、楽しげに笑っている。サンタの格好をして、月明かりに照らされながら笑っているのだ。そんな幻想的とも言える光景を眺めながら、この少女には太陽よりも月や星の淡い光が映えるのだなと、孝平は改めて思い知る。
「学院の皆にも見せてやりたいような、このまま独り占めしたいような」
「貴方以外の人が居たら、こんな格好は出来ないわ」
「それだけの話じゃないんだけどな」
「……?」
 こんな反応をする彼女も、以下略である。
「さて。クリスマスのプレゼントなのだけど……」
 やっと本題、といった風に切り出してくる桐葉に、孝平はハッとなる。
「すまん。突然過ぎて持ち出せなかった」
「貴方ではなく、私からのプレゼントよ」
「もう十分に頂いた気分だけどな」
「なら、これ以上は要らないのかしら?」
 挑戦的な物言いだった。孝平とて、男として恋人として望むところである。とことんまで喜んでやるぞと腹を決めた。
「これ以上の何があるのか、楽しみだ」
「そう。なら、あげましょうか」
 何故か対決姿勢の二人。しかし桐葉の頬にだけ、僅かに朱が差している。
 孝平が疑問に思ったその時、桐葉がそもそも薄いサンタ服に手をかけた。
「古典的な趣向で悪いのだけど……」
 そのまま、服を脱いでいく。
「お、おい? こんな、外で……」
「ちゃんと、人が来ない場所を選んだわ」
「来ないって、絶対じゃないし、その、なんだ……」
 風邪引くぞ、と言おうとしてそれが有り得ない事に気付く。
 もはや何故止めようとしていたのかも分からなくなってしまった恋人に、桐葉は面白がる様な笑みを向けた。
「サンタのプレゼントが、大きな袋の中とは限らないのよ」
「そらそうかも知れないが」
「受け取る側は靴に入れてもらうのが定番らしいわね。でも、持って来る方だって何処に隠しているか分からないわ。誰が狙っているとも限らないし」
「サンタは依頼を受けた運び屋とかじゃないぞ」
「念を入れるに越した事は無いでしょう」
「ぼ、帽子くらいなら有るかも分からんが」
「他にも胸かも知れないし、スカートの中だって、絶対に有り得ない話ではないわ」
 言うのと同時、桐葉の身に着けていたスカートが下に落ちる。とうとう下着姿にまでなった彼女は、忘れずに白髭も外して、更にそれ以上の脱衣行為に及んだ。
「そんな所に何が入るんだ……?」
「見れば分かるでしょう」
 月明かりで照らされる裸体は、歴史的な彫刻家の傑作にも勝る輝きを放っていた。当然だろう。彼らが喉から手が出る程欲しがるモデルが、自然の光に照らされて最高の輝きを放つ瞬間なのだから。
「プレゼント、なんだよな」
「好きにしてもらって、構わないわ」
 見慣れた光景、であるはずだった。しかし眼前のそれは、手の届かない筈のものが手元に降りてきた様な感覚を与えてくる。
 今や全身で月光浴を楽しむ恋人に、孝平は恐る恐る手を伸ばし――。
「あ~れ~っ、てかごめん支倉君ちょっち退いてええええええええっ!?」
 聞きなれた、この場面では間違っても聞きたくない声に邪魔されてその手はあえなく空を切るのだった。



「いや~ごめんごめんところで紅瀬ちゃん俺のプレゼント正しく活用しているようで何よりというか既に用を終えたらしく残念至極いやむしろ幸福sgべらっ!?」
 着地と同時に立ち上がる暇も無く喋り始めた軽薄金髪吸血鬼は、後を追う様に飛来した妹ミサイル=校舎間弾道飛び蹴りの直撃を受け、三度バウンドしながら校舎の下まで落ちていった。悲鳴すら無いのは意識を失ったからだろう。慣れている筈のアレが気絶するとは、相当な破壊力だった。
「ごっ、ごめんなさいね~。兄さんから『寂しい独り者同士、今夜は兄妹水入らずで夜の超人散歩と洒落込もう。月が綺麗だし穴場スポットで月見と行こうじゃないかっ!』と誘われて、裏もなさそうだしとつい付き合ったらこんな事に……」
 意識して視線を逸らしつつも、瑛里華は時々視線を『そこ』へ向けてしまう。そんな自分をこそ恥じているのか、彼女の耳は月明かりでも分かるくらいに真っ赤だった。
「お、お幸せに~」
 照れくささは、どうやら彼女の方が大きかったらしい。妹吸血鬼は兄を追う様に、慌てて校舎の屋上から飛び降りて姿を消した。
 再び静けさを取り戻した校舎屋上で、孝平達は気まずさを感じつつ兄妹が飛び去った方向を見つめ続けている。
「えーと……」
 孝平が兄吸血鬼に衝突されそうになった瞬間、桐葉が助けてくれた。そのまま、抱き合ったままで二人は倒れている。
 もちろん、桐葉は全裸のままで。
 それを、あの二人に目撃された訳で。
「……こんな場所でも、同じ人間外の存在ならば平気で来られると知れてしまったわね」
 桐葉は静かに立ち上がり、再び月明かりを浴びながら、今度は服を着始める。
 部屋に戻って仕切りなおし、といったところだろう。せっかくの趣向が台無しとなるのは残念だが、それでも嬉しいものは嬉しい。孝平にとってはそうなのだが。
 桐葉の横顔が、落胆の色を帯びている。気のせいかも知れないが、彼の目にはその様に映った。
「あっ……」
 孝平は無意識のうちに恋人の腕を引いて、抱き寄せていた。小さな悲鳴は、か細くて可愛らしいものだった。
「他に来そうなのも居ないし、むしろここで続ける方が安全なんじゃないかな」
 あの兄だけならともかく、妹もセットならば監視役を期待出来る。まず大丈夫だろう。
「でも、ここで見られたのよ。貴方以外に、見られてしまったのよ……?」
「だからこそさ。ここでの記憶を、もっと楽しい事で埋め尽くせば、忘れられるよ」
 二人は座り込んで、浅い口付けを交わす。恋人の瞳が蕩ける様に情欲の色を増すと見て、孝平は更にそのまま押し倒した。
「スイッチが入ってしまって、もう止まれないだけじゃないかしら」
「嫌なら無理矢理にでもOFFにするよ」
「冗談ではないわ。私のスイッチを無理矢理に入れておいて、何を言っているの」
 ブツブツと文句を言いつつも、態度そのものはむしろ嬉しそうに、桐葉は行為を受け入れた。
 今度こそ邪魔する者はなく、恋人達の逢瀬を月だけが静かに見守っていた。







































 <<<おまけ>>>


 瑛里華が校舎の屋上から飛び降りると、目の前には昨日までは確かに無かった不細工なオブジェが完成していた。丁度、人の形をしたモノを逆さにして半分地面に捩じ込んだ様な。
「仕方ないわね、もう」
 溜息混じりに漏らしつつ、瑛里華は兄の足をむんずと掴み、軽々と地中から全身を引っ張り出す。
「やあ瑛里華、助かったよ。優しい妹を持って、ぼかぁ幸せだなあ」
 地面に胡坐を掻きながら土塗れの兄がそうにこやかに皮肉を垂れれば、
「も~っと幸せにしてさしあげましょうか。それこそ天国へ案内いたしますわよ~、お・に・い・さ・ま?」
 妹もまた負けじと全校生徒の半数以上――男女問わない分、実は概ね兄を超えている――の心を掴む生徒会仕様の笑顔で切り替えした。
「いや、あの、あのね、瑛里華さん?」
「何かしら?」
「ここは目が笑ってないとか、そういう展開じゃないかな!? 逆に怖いぞ、その温かみに溢れた笑顔!」
「あら。だって本当に楽しいんですもの。何処までが洒落で済むか分からない兄さんがとうとう一線を越えてしまったから、私もそんなモノが相手なら一線を超えてしまっても構わないだろうし。吸血鬼の全力で吸血鬼を打ち上げたらどうなるのかしら。成層圏まで届くか挑戦してみる? ……うふふふふ、た・の・し・み・ね?」
「そ、そんなに怒っていらっしゃる?」
「どんだけ恥ずかしかったと思ってるのよ!?」
「でも、瑛里華だって少しくらいは興味あるだろう?」
「そっ、そんなのあるわけ……」
「あるわけ?」
「……その手には乗らないわよ。今日は本気で怒ってるんだから」
「うむむ。イモートコントロール失敗か」
 話を逸らそうという伊織の最後の抵抗も失敗に終わった。もはや万策尽きたとばかり、彼は地面に大の字に寝転がる。煮るなり焼くなり好きにしろ、といったところだろう。
「あら、意外に素直ね。何の罠かしら?」
「違うよ。今回はさすがに悪かったと思ってるんだ。偶然とはいえ、ねえ……」
「まだ言い逃れするんじゃない」
「いや、だから本当に偶然なんだよ、あそこに着地したのは」
「騙されないんだから」
「俺は変人だが変態じゃない。趣味に生きるし女も好きだが色情狂じゃあないんだ。だから、例えば風呂は覗いても見つかって怒られるのが前提。しかも覗くのは洒落で済む妹に限定するほどの良識があぐふぉっ!?」
 とりあえず話の腰を折らないようにと、瑛里華は兄の身体をくの字に折った。
「はい続き。まだあればだけど。簡潔にね」
「つまり、二人の仲をむしろ進展させたい私こと千堂伊織が今回の件を故意に行うのは不自然であるというか、」
「でも着地点くらい余裕でズラせるでしょう?」
「紅瀬ちゃんがあまりに綺麗でね、見蕩れてしまったんだ」
「気付いたときには回避不能、直撃コースだった訳ね」
「あれ、納得してくれるのか?」
「なんというか、その。見蕩れるのは分からないでもない、し……」
「おやおや。山のようにラブレターを貰っているのに誰とも付き合わないと思ったら、まさかその気があったとは。お兄ちゃん知らなかったなあ。でも安心してくれ、妹がどんな趣味を持っていてもお兄ちゃんだけはいつでも君の味方だよ?」
「違うわよ! 妙な小芝居までしないでよ気持ち悪い! ……芸術的、というか。そんな感じでよ」
「言い訳はいいよ。見蕩れるのは分からないでもないし、ね」
「兄さんにそう言われるのは、何だかとても釈然としないわ」
「ま、何はともあれだ」
 伊織は立ち上がると、校舎の屋上を見上げる。そして、当然のように言った。
「あそこへ戻るとしますか」
「だからなんでそうなるのよっ!」
「だってほら、早くしないと終わっちゃうよ」
「邪魔しないんじゃなかったの!?」
「もちろんしないさ。さしあしのしあししのびあ~し♪」
 テノールで意味不明な韻を刻む兄を、瑛里華は再びはたき倒した。伊織は再び大の字になる。
「い、痛いじゃないかね妹よ」
「痛くしたんだもの、当然でしょう?」
「単に俺は、まだまだ人というものを知らない妹に更なる未知の扉を開いてやろうという親心でだな」
「……本心は?」
「支倉君の大事な時間をコッソリ覗いて、後で見てきたかのように言い当ててからかうに決まっているじゃないか」



 その夜、修智館学院を舞台に兄妹吸血鬼が半ば本気で鬼ごっこをした爪痕は一晩ではとても誤魔化しきれず、某寮長による脚色を経て百年単位で語り継がれる伝説が生まれるのだった。
























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/01/09(土) 01:53:56|
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