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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

某T氏占い 第二話

 征一郎が監督生室でパソコンへのデータ入力を行っていると、空気の入れ替えのために開けておいた窓から伊織が侵入してきた。
「やあ征、結婚おめでとう」
 相手が相手なので、特別変わった行動でもない。とはいえ人の目に触れればリスクを負うのは一人ではないのだ。放置する訳にもいかず、征一郎は視線を液晶モニタから外さぬまま釘を刺しておく事にした。
「あまり目立つ行動は控えろ。それと、恋人関係になっただけだ」
「お、アッサリ認めたな?」
「からかおうとしても無駄だ。事実は事実としての答えしか返さんぞ」
「ふふん……。陽菜は俺が守るっ、ってな所かな。健気だねえ」
 ここでようやく液晶モニタから視線を外した征一郎は、目一杯の殺気を籠めて軽薄な吸血鬼を睨んだ。
 当の伊織はといえば、こちらもまた慣れたものだ。常人ならば息が詰まりそうな殺気をひらりと避けると、軽く肩を竦めながら僅かに退くのみ。
「冗談だってば。あっはははははは」
「伊織」
 真面目に受け取らない伊織に、征一郎の放つ殺気が更に高まる。さすがに伊織も、思わず身を硬くする程だった。
「名前で呼ぶな」
 しばらくして、征一郎は中指で眼鏡のブリッジを押し上げながら、やや俯き加減でそう言った。
「へ?」
「二度とは言わん」
 呆けた様子の伊織に短い言葉を付け足したのみで、征一郎は再び視線を液晶モニタへ戻す。
「なあ、ええと、その、なんだ」
「聞きたい事があるなら、はっきり言え」
「悠木妹の事は、今は何と呼んでいるんだ?」
「おかしな事を聞くな。悠木は、悠木だろう」
 居たよ。こんな身近に居た。支倉君よりも手のかかる奴が。
 ――内心ではお節介を焼きたくなったが、ゆっくり進む事で二人の時間は大切な思い出になっていく事もある。伊織はなけなしの忍耐を最大限発揮し、出掛かった言葉を自らの胸に押し戻した。
「まあ冗談を言うのも目的の一つではあるが、それだけでもないんだ」
「何だ。珍しく深刻な話か」
 言われたからという訳でもなかろうが、伊織は急に真剣な顔になる。自らが入ってきた窓の枠に腰掛けながら、彼は思いに耽る様に空を見上げた。
「お前の周りは揃ってお節介だって話だよ。二人の仲は勝手にやればいいが、外側については気になるからな。……あの人は変わった、お前も変わった。しかし、東儀側の古株は何も変わっていない。頭首とはいえ若輩者が全権握れている訳でもないんだろ?」
「発言権は、トップの一人といった所だな。この件が公になれば立場が弱まるのは避けられん。簡単には済まないだろう」
「もう動き出しているのか?」
「馬鹿を言うな。結婚など、あっても先の話だ。有るか分からない段階から話を広げては、悠木に迷惑をかける事にもなりかねん。そうなった事態への対応は考えているが、それ以上のことはその時になってからだ」
「お前らしい、消極的なやり方だな」
「相手あっての事だ。俺如き若輩者の恋愛感情など、本物と分かるまでは時間がかかる」
「じゃあ悠木妹の感情も、若気の至りって訳だ」
 がたん、と珍しく大きな物音をたてながら征一郎が立ち上がる。
 ニヤニヤと嫌らしい笑顔を崩さぬままそれを眺めている伊織を一睨みしてから、征一郎は自身を落ち着かせる為にと自らの頬を平手で打った。
「おいおい、何もそこまでしないでも」
「お前にからかわれる程度で揺らいでいては、これからの事で悠木を不安にさせるだろう。これは自身に対する戒めだ。気にするな」
「俺がからかって、そうして感情を見せる度に頬っぺたぶん殴るつもりか?」
「当然だ。これからは、白だけでなく悠木も守っていかねばならない。倍の強さが必要ならば、妥協など一つも出来ん」
「やれやれ、まだ白ちゃん白ちゃん言ってるのか、この男は」
「白は、大切な妹だからな」
「マザコンとシスコンは女性にとって最悪な要素の一つだと思うけどね」
 征一郎は咄嗟に言葉を返せず、悶々と一分以上も悩んだ末に一言。
「……悠木は、そうは言わん」
「そりゃ言わないだろうねえ、嫌われたくないなら」
 今度こそ何も言い返せなくなり、征一郎は自らの頬を先程に倍する力で殴るのだった。
























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/11/14(土) 02:03:33|
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