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竹内麻巳SS倉庫

Canvas2というゲームで、美術部部長の竹内麻巳のSSを掲載していく予定です。

奴隷物語~ぼくの名前はりゅか~(DQ5 女主人公SS)

 最後の『オマケ』以外は、以前にブログで公開したものをまとめたものです。

 そもそもの元ネタは、
20090112_443827.jpg
 こちらのLucky Catさんによります。素晴らしいので応援してあげてね♪

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DQ5 宿命の聖母(完結)









 ヘンリーは数年前から奴隷をやっている。望んだ訳ではないが、王子として過ごしていたにしては妙に性に合っていたらしく、手を抜ける所は抜いて現状と上手く付き合っていた。
 もちろん大変な事も多いのだが、苦楽を共にする相棒が居たから何とか耐えてこれた。誘拐され、奴隷として売られるより少し前から一緒に居るから誰よりも仲良しだ。コイツの為にも一人で倒れる訳にはいかない、とお互いに励ましあう毎日だ。
 そんな『コイツ』について最近、ヘンリーは無性に気になる事があった。
 寝るまでの僅かな時間にそのことを思い出し、本人に直接聞いてみる。
「なあ、りゅか」
「うん?」
 古株の奴隷仲間から教わった文字を地面に書いて練習していたリュカが振り向いた。長い髪が一房だけサラリと落ちて、妙な色気にヘンリーはくらくらした。
「どうしたの?」
「い、いや、なんでもない……じゃなくて。変なことを聞いてもいいか?」
「構わないけど……なに?」
「お前、女だったりはしないよな?」
 そう問われてポカンとしていたりゅかは、一瞬の後に吹き出した。
「聞くまでも無いでしょ」
「おいおい、笑うなよ。我ながらおかしいとは思ってるんだぞ」
「ホントだよ。何年も一緒に居るのに、今更ぼくが男になんてなる訳ないじゃない」
「そうだよなー」
 あははは、と笑い合う二人。
「途中で性別が変わる人間なんて居る訳ないよな」
「そうだよ。ヘンリーだって最初から男の子でしょう?」
「当たり前じゃないか」
「じゃあ、ぼくだって最初から女の子でも当たり前だよね」
「ああ。じゃなきゃ一緒に風呂入ったりする訳無いもんなー」
「最近はちょっと恥ずかしいかな。でも、たまには綺麗にしたいから、ただでさえ少ない機会にどちらを我慢するかと言えば、恥ずかしい方に決まってるよね」
「……ホントに女だったりはしないよな?」
「決まってるじゃない」
 りゅかは、ちょっとムッとした顔で言った。
「ぼくは生まれた時から女の子だよ」





「……お前、女のくせに『ぼく』って一人称はおかしいだろ」
「そうかな? お父さんがそう言えって言ってたんだけど」
「その時は、どうしてそういう話になったんだ?」
「えっと、ぼくはお父さんみたいに強くなりたくて……」
 ヘンリーはムキムキマッチョなおっさんの身体の上にりゅかの愛らしい顔が乗っている姿を想像した。よりによって、見事すぎる笑顔だった。
 パパスは憧れるに相応しい漢っぷりだったが、そのミスマッチは悪夢でしかない。
「そ、それは勘弁してくれ……」
「へ……?」
「いや、なんでもない。続けてくれ」
「うん。……それでね。ぼくは『俺』って言うようにしたんだけど、ある日、それを聞いたお父さんは言ったんだ。下品だからやめなさい、って」
 同感だった。ヘンリーはうんうんと頷きを繰り返すのだが、りゅかは不満そうに唇を尖らせている。
 今までは何ともなかったのに、女の子だと分かると急にそんな仕草が可愛らしく見えてくるから不思議だ。
「それで、じゃあ何て言えばいいのって聞いたら、お父さんは『私』と言うようにって言ったんだ」
 これまた正しい。さすがは天下のパパスとヘンリーは心の中で喝采を送る。
「しかし、それがなんで『ぼく』になるんだ」
「断ったからだよ」
「珍しいな。お前がパパスおじさんの言う事に反対するなんて」
「だって、そんなの女の子みたいで弱そうじゃない」
「……女なんだよな? あえて確認するけど」
「そうだよ」
「じゃあ、いいじゃないか」
「ぼくは、お父さんみたいに強くなりたいって言ってるのに。ヘンリー、話聞いてたの?」
「いや、まあ、聞いてたんだが……」
「なんだか上の空だよ。ぼくの目は誤魔化せないからね。ヘンリーの事は、ヘンリー以上によく知ってるんだから」
 プンスカしている姿も可愛い。
 先ほどまで男だと思っていた相手に何を、とも思うのだが、ヘンリーは自分を抑えられる自信が無くなってきた。
(少なくとも、もう風呂は一緒に入れないな。いや、コイツが本当に女の子ならますます目を光らせて守ってやらないと)
「どうしたの?」
 気付くと、目の前数センチに迫るりゅかの顔。鼻先が触れそうなくらいの距離。
 ヘンリーは慌てて飛び退った。
「ちちち違うぞっ! 俺は決してやらしい――もとい、やましい視線でお前を見ようとかじゃなくてだなっ!?」
「何を言っているの? おかしなヘンリー」
 明るく笑うりゅか。笑顔が眩しい。
 こりゃどうにもならんな、と諦めるものの、自身も幼いヘンリーには何を諦めたのかもよく分からなかった。





「ところで、ぼくが女だってどうして今更気付いたの?」
「いや、だから俺は分かってたんだって。あれはちょっとした冗談でだな……」
「ぼくの方が分かってる。言ったでしょ、ヘンリーの事なら何でも分かるんだから」
 えっへん、と胸を張るりゅか。その僅かに膨らみ始めた部分に、ヘンリーの視線は嫌でも向いてしまう。
 何でも分かると言い張るりゅかだが、そもそも男女という関係をよく分かっていないから、そうしたヘンリーの気持ちまでは分からない。ただ普段と比べて何かおかしいな、くらいなものだ。
 そして、隠していると思えば聞きたくなる。興味だけじゃなくて、一番の親友だから何もかも理解し合っていたいと思っていた。
 ヘンリーもそれは同じだったが――少なくとも気持ちの整理がつくまでは何も言えない。言える訳が無い。
 まして、女だと気付いた理由が、
「あ、そっか。最近大きくなってきたから、これかな?」
 今、自らプニプニしている小さな膨らみだなどとは。
「そういうのはやめとけ。な、りゅか」
「そういうの?」
「いや、だから、その……胸を、だな」
「触ったらいけない、ってこと?」
「そ、そうだ」
「どうして?」
 宝石みたいにきらきらした瞳は、この世の裏側を何も知らないみたいに綺麗だった。そんな瞳に迫られて、ヘンリーは自分が凄く汚れた人間なのではと感じてしまう。
 りゅかだって、世界の汚い部分は嫌というほど見てきているのだ。それでも、周りの人間が信じられる。そんな自分を、信じられる。そんなりゅかに信じられるから、ヘンリーだって自分の事を信じられる。
「ごめん、りゅか」
「どうしたの、いきなり。ヘンリー、何か悪い事したの?」
「いや、自分でもよく分からない。でもごめん。許してくれるか?」
「……よく分からないけど、ヘンリーが真剣に謝っていることくらい分かるから。ぼくは、ヘンリーが何をしても、反省してくれるなら何でも許すよ」
 何でも許す、の意味を履き違えて暴走しそうになる自分を抑えるのに、ヘンリーは一生分の忍耐力を使い果たした気分になった。





「それで、どうしてぼくが女の子だって気付いたの?」
 自覚は無いにしろ、男女というものに興味が芽生え始める年齢には違いないらしい。自分が男に見えるか女に見えるか、そこにはコンプレックスが無いらしいりゅかは、単純な興味だけでヘンリーを追い詰める。
 無邪気さは時に残酷だ。特に思春期の健全な少年にとっては。
「許して、くれるんじゃなかったのか?」
 苦し紛れにそう言ったヘンリーに、りゅかは残念そうにしながらも矛を収めてくれる。
「そういう意味じゃ無かったと思うんだけど……。でも、したのねもかわかないうちに、って言うからね。仕方ないかな。今日は許してあげる」
 ホッと胸を撫で下ろすヘンリーだった。
「でも、しばらくしたらまた聞くからね。ちゃんと答えてくれないと、駄目なんだから」
「りゅかには敵わないな」
「そうかな? ヘンリーの方が凄いよ。ぼくが大変な時は、いつも助けてくれるし」
「お互い様だろ。俺だって、お前には物凄く助けられてる」
「例えば?」
「そうだな……」
 今日はやりこめられてばかりだ。少しはやり返したい。
「例えば、お前の笑顔とか」
 ヘンリーは少し考えた末にそう言った。女の子なら照れるはずだ。少なくとも城の女達は、これくらいの言葉でキャーキャー言っていた。今にして思えば子供の言う事だ、意味は違うかも知れないが、人生経験の浅いりゅかになら通用するかも知れない、とヘンリーは考えた。
 しかし、相手はそこらの普通の女の子とは全然感性が違っていた。
「こんな感じでいいの?」
 眩しすぎる笑顔を返されて、ヘンリーはまたもりゅかには理解出来ない謝罪を繰り返すのだった。





「ところでりゅか、お前どうして奴隷なのに、そんなに肉付き良いんだ?」
「日々の労働だけじゃなくて、筋トレもしてるよ? いつかの為の備えは欠かせないし。魔法も剣術も、一日だってサボった事が無いんだから」
 得意気に胸を逸らすりゅか。
 もちろん、ヘンリーが言っているのは筋肉というより、その逸らした箇所を含む極一部に張り付いた贅肉の塊だったのだが。
「いや、そうじゃなくてだな……」
「うん?」
 つぶらな瞳に見つめられて、何も言えなくなる。ヘンリーは変な気分になる前にと慌てて視線を逸らした。
「ま、まあ細かい事はいい。食料についてだ」
「それなら、食料の配給とは別に、監視の人がパンを余計にくれるんだ。凄く良い人だよね~」
 呑気に微笑むりゅかの顔を見れないまま、ヘンリーの背中には嫌な汗が伝っている。
 家畜は太った方が美味い。女はふっくらした方が美味い。そう考える奴が、もしりゅかが女の子だと気付いていたら? 餌付けして懐かせつつ、適度に肉が付くようにと食料を与える。有り得る話だ。そして、丁度良い頃合いを見計らって外に出してやると誘い出し――。
 思春期突入直後の少年には、このくらいの妄想など朝飯前だった。
「り、りゅかっ!」
「どうしたの、ヘンリー。いきなり大きな声をだして。みんなが驚いて起きちゃうよ」
 ヘンリーは、周りを気にするりゅかの肩をガッチリと掴んだ。
「そんな事はどうでもいい。いいかりゅか、もうそいつから食料は貰うな。それだけじゃない、なるべく会わないようにしろっ!」
「そ、そんなこと言われても……。お腹が空いちゃうよ?」
 いきなり迫られて驚いているりゅか。その瞳に僅かな怯えを見た気がして、ヘンリーは二の足を踏みそうになる。
「ヘンリーに分けてあげた分だって、その人から貰ったお陰なんだよ?」
「そ、そうなのか……?」
「うん。いつか、ここから逃げ出す為には一杯食べないといけないし。ヘンリーだって、ここから出たいよね?」
 確かにそうだ。りゅかは正しい。
 しかし、こちらも大事な大事な――ええと、親友を守るためだ。そう、親友だ。友達だ。相棒だ!
 自分に言い聞かせつつ、ヘンリーはりゅかの説得も続ける。
「あの連中が、そんな優しく接する訳が無いんだ。絶対、裏で何か企んでるに決まってる。甘い言葉に騙されて、ここに送られた奴だって沢山居るじゃないか。その二の舞になんてなるな。いいな、りゅか?」
 真剣なヘンリーの言葉を、どう受け取ったのか。
 りゅかは親友の腕を掴み、そっと自分の肩から外して、僅かに身長で勝るヘンリーの瞳をやや上目遣いになりながら見つめる。
「駄目だよ、ヘンリー。人の優しさを疑うのは、自分を卑しくするよ」
 りゅかの、見つめられるだけで吸い込まれそうになるほど純粋な黒い瞳は、少しだけ怒りを滲ませていた。
 視線だけで折れそうになる自分を、ヘンリーは慌てて奮い立たせる。そのりゅかの為なのだ。無防備な親友を守るために、ここはどうあっても引き下がる訳にはいかない。
「そっ、そんなこと言ってる場合か!? 俺はお前の為に言ってるんだぞっ!」
「嬉しいよ。うん、ヘンリーの気持ちは凄く嬉しい。でもね、ぼくたちは生き残るだけじゃ駄目なんだ。自分が自分で在り続けて、そのままでここを出なくちゃいけない」
 冷静に考えれば、自分が正しい。ヘンリーはそう信じている。でも、りゅかの瞳に見つめられると、不思議と理屈に合わない事でも納得してしまう。そうしなければならない気が、してくるのだ。
「仕方ないな……。でも、危ない感じがしたら逃げるんだぞ?」
「逃げ道なんてあったら、ここから出てるよ」
「違いない」
 目を見合わせ、笑い合う。
 こんなりゅかの瞳を向けられて、最後まで企める人間がどれだけ居るだろうか。たとえ本当に悪者だとしても、途中で改心して本当の優しさで見守るようになるかも知れない。あの看守が良い例だ。
 もちろん全面的にそう信じた訳でもないが、りゅかだって馬鹿ではないはずだ。ヘンリーも、ここはしばらく様子を見る事にした。
「逃げられないにしても、大声を上げろよ。すぐに飛んでいくからな」
「うん。でも、その時はヘンリーも一緒にやられちゃうかもね。ぼくの方が少しだけ強いから」
「二人がかりなら誰にも負けないさ。でもまあ、そうなるならなるで、お前だけが殴られるよりはマシだろう」
「ぼくもだよ」
「……?」
「だから、ぼくも。ヘンリーだけが鞭で打たれる事があったら、一緒の方がマシだから」
 さしものヘンリーも、この時ばかりは抱き締めたいという衝動に負けてしまった。
「どうしたの、ヘンリー?」
「いや、その、すまん……」
「また謝るの? 今日のヘンリー、変だよ」
「……すまん」
「ほら、また」
 くすくすと小さく笑うりゅか。ヘンリーは、愛しい相棒の顔を見られないのが残念だった。それでも、抱き締める手を離す気にはなれない。
「なんで抱き締めるのを謝るのか分からないけど、ぼくは嬉しい。あったかいもん」
「……臭くないか?」
「お互い様だよ、みんなそうだもの。そんな感覚は、誰も残ってないよ。それに、ヘンリーの匂いなら嫌じゃないし」
 恐らく初めて同年代の少年に抱き締められたりゅかは、ぬくぬくほわほわしながら気持ち良さそうに眠ってしまう。
 今日だけ、今日だけだと自分に言い聞かせながら、りゅかの規則正しい寝息を飽きもせず聞き続けていたヘンリーも、いつしか深い眠りに落ちるのだった。










 >おまけ
「ゲレゲレ~、ゲレゲレ~、ってうわ言みたいに言ってたら、看守のおじさんが出してくれたの」
「なんだそりゃ」
「気分が悪いなら今日はもう休め、って」
「それでお前だけ先に戻ってたってのか? 理不尽だ。男女差別だ」
「もちろん、ぼくはヘンリーを置いて帰れないって言ったんだけど、それならぼくが帰ればヘンリーも少しだけ早く返してくれるって言われて」
「ああ、そういや定時で牢屋から出されたのなんて初めてだったな」
 ヘンリーは地獄のような日々を思い出してみる。実際に思い出せたのは半分くらいだった。鞭に打たれすぎて、大半の記憶が飛んでいる。奴隷になりたての頃から反抗的だったヘンリーだから、牢屋で鞭を打たれるのは日常に違いなかった。
「もしヘンリーを出してもらえなくても、明日の仕事はぼくが頑張って引き受ければいいかなって。でも、約束を守ってくれたし。牢屋のおじさん、良い人だよね」
 能天気に嬉しそうな笑顔を浮かべるりゅか。しかし、どんなに無邪気な笑顔で言われても、同意する奴隷は恐らくヘンリー一人だけだろう。
 あれは鬼だ。鞭で人を打つのが生きがいのキチガイさんなのだ。ヘンリーとて例外ではないのだが、最近何故だか扱いが悪くない。きっと、りゅかと仲良しだからだと思っている。
 他の奴隷には悪いが、りゅかがそう思っている限り、あの看守もりゅかにだけは優しいのだろう。それだけは、本心から有難い。
「まったくだな。何か機会があれば、恩返しに肩でも揉んでやるか」
 少しは感謝の念が混ざっているからか、ヘンリーの嘘にりゅかが気付いている様子はなかった。或いは、自分よりりゅかが大切にされる方が嬉しいのは本当だからかも知れない。
「じゃあ、ぼくは足を揉んであげようかな」
「お前なら笑顔で礼を言うだけで十分過ぎるだろうよ」
「もちろん、それはしないといけないね」
 こちらにまで向けられた笑顔に、ヘンリーは思わずりゅかを抱き締めたくなる。本当に、色んな意味で危なっかしい少女だった。
「それでね、ヘンリー」
「な、なんだ。俺は別に変なことなんて考えてないからな」
「へ? ……何のこと?」
「いや、こっちの話だ。それで?」
「うん。ゲレゲレの事を思い出してたら、寂しくなっちゃって。今日は一緒に寝ていい?」
 何気ない風なりゅかのお願い。奴隷として売られた当時は二人とも幼かったから、いつも一緒に寝ていたものだ。
 しかし、相手が女の子と分かればそうはいかない。
「だっ、駄目だっ! 絶対っ!」
 ヘンリーが慌ててそう言うと、りゅかは顔をくしゃくしゃに歪めた。
 りゅかにとっては何も特別なお願いでは無かったから、一方的な拒絶にショックを受けるのは、考えてみれば当前のことだった。
「ぼくのこと、嫌いになったんだ……。ヘンリーに、嫌われちゃった……」
「え、いや、違うぞ。むしろ正反対というか……」
「今日はマリアと一緒に寝る」
 引きとめようと伸ばしたヘンリーの手が、空中で止まった。
 女の子が女の子と寝る。それを阻止して、男である自分の隣で寝ろと言う。その状況とは、つまりなんなのだろうか。
「……ええと、今日のところはそうしてもらえ。くれぐれも、俺はりゅかのこと大好きだからな。今日は気分が乗らないだけだからな」
「うん……」
「ご、ごめんな」
「うん……」
「じゃ、じゃあな……」
「うん……」
 りゅかは、頷きつつも離れようとしない。
「今日はマリアに譲るけど、明日は俺と寝ような」
 いけないとは思いつつ、ヘンリーはその言葉を飲み込む事が出来なかった。
 視線を逸らしながら言ったヘンリーの言葉に、りゅかの顔がぱぁっと明るくなる。
「きっとだからねっ!」
「あ、ああ……」
「嘘だったら、今度こそ許してあげないんだからねっ!?」
「お、俺がお前を騙した事なんてあったか……?」
「うん。たびたび」
 清々しい笑顔で断言されてズッコケるヘンリー。
「お、お前なぁっ!」
「ふふ。冗談だよっ」
 りゅかにしては珍しい悪戯っぽい笑みに、ヘンリーの心臓が大きく跳ねた。
「お、お前、本当にマリアとは仲が良いな?」
「うん。新しいお友達が出来て嬉しい」
「そ、そうか……」
「ねえ、ヘンリー」
「うん?」
「妬いてるの?」
「なっ、お、お前なっ!」
「あははは。じょ・う・だ・ん、だよっ!」
 大きなモーションで殴る真似をするヘンリーの拳をくるくる回りながら避けて、りゅかはマリアの下へと向かった。
 しかし、不意に途中で立ち止まると、大きな動作で長い黒髪をなびかせながらくるりと振り返る。
「あのね。マリアと仲良くなれたのは、ヘンリーのおかげなの」
「……俺?」
「うん。マリアとはね、ヘンリーの話をすれば、いくらでも時間が過ぎちゃうんだよ」
「そっ、そうなのか」
「ヘンリーの事が好きなのかもね?」
 今日、何度目だろうか。真っ赤になるヘンリーを見て、りゅかは無邪気に笑っている。
 この反応が、マリアに好かれているかも知れないからか、りゅかの口から『好き』という単語を聞いたからか、ヘンリーには自分の気持ちがよく分からなかった。
「じゃあね、ヘンリー!」
「お前なんて、さっさと行っちまえ!」
「うん。でも、絶対にヘンリーの所へ戻ってくるんだから、ちゃんと待っててね?」
 もちろん、ヘンリーだって最初からそのつもりだった。
























少しでも楽しめたら、押してみてくれると作者が喜びます。





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/06/11(木) 00:57:48|
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